EDANO Yukio / E-mail News Letter 枝野幸男Eメールニュースレター
枝野幸男から、月2回程度、Eメールでニュースレターを発信しています。 ご登録いただければ、国政で問題となっている数々のテーマに対して、マスメディアで報道されているものとは違った視点の存在が見えてくるはずです。
Vol.201(2008年12月17日)
【景気対策の具体策~その3】
経済を抜本的に立て直すため、
中長期的に最も重要なのは、
所得再分配機能の再構築です。
消費拡大・内需拡大のためには、
家計所得の上昇が不可欠ですが、
特に重要なのは、
中堅所得層や低所得層における所得の上昇です。
年収1億円の人が2億円になっても、
増えた1億円から国内消費に回る分はごく一部ですが
所得の低い人は、
否応なく収入のそのほぼ全てが消費に回ることから、
所得の増減が直接、消費の増減につながります。
労働者派遣法を緩和前の15年前まで戻し、
同一労働・同一賃金の原則を法制化して、
ワーキングプアの問題を抜本的に解決すべきです。
公正取引委員会による中小零細・下請との取引監視機能を強化し、
苛酷な下請いじめを防止する必要があります。
麻生総理が、日本経団連等に対し、
賃金引上げを要請したというのは、
景気後退局面に入った現時点では、
少なくとも3年以上遅すぎます。
しかしそれでも、儲かった企業に
適正な分配をさせることは、中長期的に重要です。
これを、政府から民間への「要請」という
法治国家においては本来許されないはずの
法的根拠に基づかない方法で進めるのではなく、
立法に基づいて制度的に担保することが不可欠なのです。
さらに私は、税による所得再分配を強化すべきと考えます。
この間、法人所得税や高額所得者への減税が進んできましたが、
これを逆方向に進めるべきです。
法人所得税率の引上げには、
中小零細がもたなくなるという批判が付きまといます。
しかし、法人所得税は
経費等を控除した利益にしかかからないことから、
本来であれば、税率引上げが
経営そのものを悪化させることにはならないはずです。
中小零細の経営や研究開発投資などの視点から重要なのは、
本来、税率ではなく
「何が経費として控除されるのか」という点なのです。
これまで、法人税率は引き下げられてきましたが、
中小零細向け控除は縮小させられてきて、
むしろその経営にマイナスの効果が生じています。
必要かつ適切な控除を十分に認める前提で、
税率を上げ、所得再分配機能を強化すべきです。
もっとも、中小零細業には、
赤字決算だと融資を打ち切られるという問題があり、
実質的に赤字で法人所得税がかからないはずなのに、
経理上、黒字にしているため法人所得税を払っている
という実態も認められます。
しかし、これは、
課税の前提となる処理となる会計処理と、
融資判断の前提となる会計処理とは
別次元の問題であるということを、
金融機関に徹底させれば済むことです。
もう一つ、法人所得税率や所得税の累進を強化すると、
競争力のある企業や高額所得者が海外流出してしまうという、
いかにももっともらしい指摘がなされます。
こうした視点を完全に無視することはできませんが、
この視点に縛られすぎるのも問題です。
企業立地は、税率等を含むコストだけで決まるものではありません。
コストだけを考えれば、どんなに税で優遇しても、
人件費の安い新興諸国に勝てるはずがありません。
実際には、技術力を中心とした品質・性能等の生産能力の問題や、
政治的カントリーリスク、市場との地理的関係など、
様々な要因を総合的に勘案して立地が判断されます。
これらの総合判断に基づき、
日本国内でビジネスせざるをえない分野以外は、
いずれにしても海外流出するし、
既にしていると認識すべきです。
個人についても、税率以上に重要視されるのは、
どこでその高額な所得を得られるのかという点とともに、
言語・子弟の教育・治安などの生活環境です。
例えばイチローや松坂は、
税金のせいで大リーグにいったのではありません。
日本以外にも、むしろ日本以上に評価され、
所得を得られる米国大リーグという市場が存在したから、
海外進出したと観るべきでしょう。
逆に、小室哲也容疑者は、海外に出ようとしたけれど、
海外では国内のように
彼の音楽的才能を受け入れる市場が存在しなかったため、
上手くいきませんでした。
それぞれの持つ技能の性質の違いこそが重要でした。
世界をまたにかけてビジネスをしている人でも、
子どもの教育を日本で受けさせるために、
生活の拠点と家族は日本にあるという人も
けっして少なくありません。
例えば研究者を流出させてしまっている日本の大学のあり方や、
格差が拡大すると相対的に悪化する治安状況など、
税率以外の問題の方が、
海外流出との関係では重要だと思います。
私の考える所得の再分配政策は、
決して弱者救済の福祉的政策ではありません。
内需を拡大させ、市場が拡大再生産するための
合理的な経済システムとしての政策です。
経済は供給側だけで成り立つものではなく、
購買力のある消費者が存在してこそ成り立つものだという、
経済学以前の当たり前の現実を直視すれば、
答えはおのずと明らかです。

