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EDANO Yukio / E-mail News Letter 枝野幸男Eメールニュースレター

枝野幸男から、月2回程度、Eメールでニュースレターを発信しています。 ご登録いただければ、国政で問題となっている数々のテーマに対して、マスメディアで報道されているものとは違った視点の存在が見えてくるはずです。

Vol.191(2008年3月13日)

【日銀総裁人事】

日本銀行総裁人事をめぐって、
様々な議論がなされていますが、
一部に制度の本質を理解していない論調が見られます。

日本銀行総裁の任命には、
衆参両院の同意を得る必要があります。
ここで、衆議院の多数派は、
内閣を支える与党であるのが普通ですから、
内閣の提案に同意することはほぼ間違いありません。
したがって、重要なのは、与党が多数とは限らない参議院の同意です。

ここで第一に指摘したい不思議な議論は、
内閣がベストであると判断して同意を求めた以上、
混乱回避のために参議院も同意すべきという論調です。
内閣の判断を、参議院は当然に受け入れるべきであるなら、
国会同意という手続は意味がありません。
内閣がベストと判断しても、
参議院が別の見地から判断して適切でないとなれば、
不同意になることが法律上、当然に予定されているのです。
したがって、内閣に与えられた指名権は、
参議院も同意できる範囲の人物から指名するという限定的なもので、
同意が得られなければセカンド・ベストを提案すべきというのが、
そもそもの法の趣旨です。
それが内閣にとってはセカンド・ベストであったとしても、
内閣・衆議院・参議院という国権を担う三者の総合判断としては、
ベストの人事であると考えているのが、
現行の日本銀行法です。

関連して第二に指摘したいのは、
こうした手続を定めた日本銀行法は、
自民党や公明党という与党も賛成して作られていることです。
内閣の提案が不同意になる場合があることは制度的に明らかであるのに、
そうした法律を堂々と賛成しておいて、
いざ不同意の権限を行使しようとしたら
混乱するから困るなどというのは、
みずからが賛成して作った法律を自己否定するようなものです。
今回の同意人事に限らず、
内閣の決定こそが最終的判断であって、
国会はこれを追認さえしていれば良いというのが、
衆参両院で多数を維持してきた従来の与党の考え方であり、
これに論調の一部が引きずられていると思います。

第三に指摘したいのは、
民主党に対案を示せという論調についてです。
法律案等と異なり、形式的にも提案権は内閣にしかなく、
民主党は対案を国会に提案することはできません。
そもそも日本銀行法は、
野党(参議院の多数派)にとってベストと考える人物を
総裁にすべきという制度になっていません。
国会が積極的に適切と判断する人物を指名するのではなく、
同意するか否かの判断にとどまるということは、
国会が同意できる範囲内で、
内閣がベストに近いと判断する人物を総裁にするという制度です。
法律案等と異なり、人事問題は、
足して二で割るような妥協が困難である一方で、
たくさんの候補者に対する評価は、
二者択一ではありません。
この人がベストと考える人選から
この人は容認できないという人選の間には、
次善、三善の人選や、
積極的には評価しないが拒否まではしないなど、
様々な濃淡がありえます。
この中で国会の側(民主党)に与えられた権限は、
容認できない人を不同意にする権限だけで、
民主党にとってベストと考える人物を
内閣に強要する権限までは与えられていませんし、
そうしようとは思っていませんから、
対案というものはそもそも成り立たないのです。

さて、武藤氏が不適切である理由は色々とありますが、
その一つとして分かりやすいものは、
武藤氏が金融の専門家ではないという事実です。
武藤氏の出身の大蔵省・財務省にも
金融関連の部署は存在しますが、
武藤氏はほんの一時期を除いて、
ほぼ一貫して主計局という予算編成の部局にいました。
金融を専門的に勉強してきたわけでも、
金融問題に関する行政を主に担ってきたわけでもなく、
財務事務次官として功なり名を遂げてから(?)、
60歳近くになって日本銀行副総裁に天下り、
5年間務めたという経験を持つに過ぎません。
にもかかわらず余人代えがたいとしてこだわるのは、
日銀総裁は大蔵省・財務省出身と日銀出身を交互に充てるという
役所の論理に基づくたすきがけ人事を守ろうとしているに他なりません。
武藤氏が金融の専門家として経験を積んできたならば、
一時的に財務省事務次官を務めていたからといって、
不同意にする理由にはなりません。
しかし、金融とは関係なかったけれども、
財務省事務次官だったから日銀総裁にしようとしているとしか、
受け止めようがない人事であるから、
容認できないと考えているのです。
もちろんこの他にも、
武藤氏が推進してきたゼロ金利政策と日銀による国債買取など
政策的にも評価できない点が多々あります。

なお、国会で意見聴取をする前から反対ありきという方向にも、
批判的な論調があります。
しかし、一時間程度の質疑「だけ」で判断できるはずがありません。
とうてい容認できない人事であるけれども、
本人に意見を聞くことで疑義を晴らすことのできる可能性もあることから、
意見聴取をしましたが、
金融政策についての認識も、
財務省との関係についても、
具体性に乏しい形式的発言だけで、
容認に転じるほどの陳述・答弁はありませんでした。

こうした観点に基づいて、
私や私の周辺で経済・金融政策に関わっている議員の間では、
半年以上前から、武藤副総裁の総裁昇格は、
よほどのことがない限りあり得ないというのが、
当然の前提になっていました。
したがって、政局的に政府を困らせようとして不同意にしているというのは、
まったく事実と異なります。
もっとも、党内での正式な議論と結論を示す時期が後手に回ったことや、
予算が強行採決されたから対決姿勢で反対していると
誤解されかねない幹部の発言もあったことから、
なぜ不同意なのかという真意が十分に伝わらず、
政局的思惑で不同意にしていると誤解されている側面があります。
こうした誤解を払拭する努力をさらに重ねる必要はありますが、
同時に、これから5年間の日本の金融と経済を左右する人事である以上、
誤解に基づく世論に迎合するという党利党略的判断で、
武藤氏容認に転じることは許されないと考えています。

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