
枝野政調会長/記者会見要旨
2003年2月05日(水)
編集・発行/民主党政策調査会
○2003年2月05日「次の内閣」閣議報告
■ 民主党予算案
【政調会長】
本日の閣議で民主党予算案を決定した。民主党の予算案は3つのテーマ
を持っている。①100万人分の仕事を作る、②次世代への責任を果たす、③自由に使え
るお金を地域に渡す、この3つのテーマにそって「私たちが政権を担っていたら」と
いう前提で提起をした。
従来は重要な項目について組替えを要求してきたが、今回はそもそも政府の予算案を
前提とせず、民主党政権ならという予算の中味を提起する。
1月17日に「次の内閣」の閣議で決定された「経済財政に関する基本方針」を改めて
配布したが、我々は経済の悪化の主な原因のひとつは予算の使い方が間違っているか
らであると考える。
ここがポイントであると従来から主張してきた。経済を再生し、社会に役立つような
予算の使い方をすべきである。規模ではなく、中味の違いを国民の皆さんに知ってい
ただきたい。予算の使い方の5つのポイント、①「潜在的需要」を掘り起こす、
②将来不安の解消を図る、③仕事を生み出す、④地域の個性を生かす、⑤必
要な資金を循環させる、これらのためにどうしたらよいのか。この5つの目的に向け
て予算を編成した。
政府案と比較するために、算定のスタートを政府の税収見込みと同額の41.8兆にし
た。しかし、政府の41.8兆円は甘すぎる見込みだと考えている。政府の予算案では経
済の再生にはつながらず、見積り通りの税収はあがってこない。したがって41.8兆円
の中味については予算委員会で厳しく追及していきたい。民主党の予算案であれば、
41.8兆円の税収は確保できる。
一つの柱は、政府は先行減税と呼んでいるが、今回の政府予算案に含まれている税
制改革には反対ということでゼロベースにした。特に、発泡酒の課税に見られるよう
な大衆増税によって財源を生み出す政府の税制改正は全面的に採用しない。
民主党の税制改正案では3.3兆円の減税を行う。具体的にはローン利子控除制度、
つまりローンを組んで何かを購入した場合には、ローンの利息については基本的に所得
控除ができる。これにより消費の喚起をはかる。あるいは不動産の流動化の観点から登録免
許税手数料化などにより1.3兆円の減税を行う。
次に環境税創設については3点をワンセットにしている。①環境税の創設、②自動
車関連諸税の減税、③道路特定財源の一般財源化。道路特定財源の税収は、道路に関
係する税金であり、かつ道路に使うということで、暫定税率が高く設定されている。
この部分も減税し、道路特定財源を一般化する。環境が次世代に責任を果たすという
観点からも重要な時代であるので、環境税を導入する。
しかし、国民全体の税負担が増えることがないように、環境税の増収分と自動車関
係諸税の減税部をトータルでは増減税中立にする。自動車関係で払っていたものが、
その分環境税になり、用途は環境分野になる。実は、自動車関係諸税の一部は地方税
であるので、地方の収入が減って、国民から見れば中立だが、国でみれば5千億の増
収である。
その他税外収入など政府並み、国有財産の売却は政府より急ぐということで、歳入
歳出規模は政府案と同じ81.8兆円である。そして、私たちは100万人分の仕事を作る
ためにも、借金に依存せずに今必要な事業にお金を配分するということで、歳出を政
府案に比して大幅に削減し、(その事業のための)財源を捻出する。
一つはいわゆる公共事業予算である。国が直轄で行っている事業、一般会計予算で
行っている6千億を半減する。特別会計の事業の大幅見直しで、一般会計から特別会
計に繰入る3兆円を捻出した。公共事業の削減で3兆6千億円を捻出した。一括交付金
化に伴う行政事務の簡素化により3.2兆円を生み出す。特殊法人改革は、全く小泉内
閣では全く進んでいない。民主党の主張している特殊法人改革案では1.2兆円あまり
削減できる。
額は小さいが、このような厳しい経済状況であるので、国会議員歳費を削減する。国
家公務員は、人事院勧告との関連があり、公務員制度改革の議論が決着しないと、予
算編成上だけで削減するということはできないが、そこに係らない部分、予算委員会
で上田議員などが指摘した幹部の退職金などで1千億円程度
を捻出する。
ODAや思いやり予算のうち、思いやり予算とはいえないような豪華なクラブを作っ
たり、安全保障上米軍にとって不可欠な部分以外の冗費、余分な経費がある。防衛庁
の調達問題は、さらに削減できる部分がありさらに4千億円。官房機密費や外務省の
機密費で2千億円、合わせて8.8兆円の財源を捻出。
この8.8兆円で100万人の仕事を生み出す。国民の皆様が求めている潜在的需要、主に
サービス分野になるが、例えば高齢者、障害者のグループホームの数が徹底的に足り
ない。これを1万戸増設するために7400億円の予算を配分する。ちなみにこのグルー
プホームを1万戸建設すると10万人の雇用が必要になる。建設従事者の数は含まれて
いない。公共事業は削減するので、水増しはしていない。子育ての不満が高まってい
る中で、学童保育に希望者が全員入所するには87億円あれば可能である。全国、放課
後学童保育で5万人雇用が必要になる。これまで懸念であった30人学級を早期に実現
するためには5年間で30人学級を実現するが、単年で960億円必要であり、12万人の教
員の雇用が生まれる。国民の潜在的需要にあっている。こうしたものを諸々組み合わ
せ、足し上げると、全体で100万人弱の雇用が生まれてくる。
また、将来不安の解消を図るために、医療費3割負担増を凍結する。介護保険財源
安定のために4千億円使う。仕事を生み出す上では雇用のミスマッチ、従来の雇用が減った
分と新規の仕事の雇用にはずれがあるので、職業能力開発支援制度に5千億円。雇用
保険財源の安定化のために5千億円。このような分野に2.2兆円を配分している。
一括交付金制度について説明をする。既に民主党として確認しているものを予算と
して組み込んでいる。現在国の支出80兆円のうち20兆円は地方自治体に対する補助金
である。市町村が行う事業に国が補助金を出している。現在の補助金は国が様々な基
準を作り、国が縦割りで事業を決めている。したがって地方自治体は、自分達の希望
通りにできるものではない。どうせ補助金がつくならやってしまおうということで
やってしまうこともある。補助の基準も細かく決まっているため、地域の事情にあっ
た柔軟性がない。例えば、交通量が少ないから車線を少なくしたいと思っても、国の
基準で細かく決まっているので不可である。ここに無駄な公共事業がでてくる。古い
自民党の政治家には、俺が補助金をもってきてやるからということで、利権の構造が
生まれる。従って、こうした補助金をなくして、地域が自主的な判断で使うことがで
きるようにするのが、この趣旨である。
20兆円のうち一括交付金にできないものがある。生活保護等、国が保障すべき全国
一律のものなどが、一括交付金の対象外になる。
この上で5つのカテゴリーに分けて自治体に交付する。①まちづくり一括交付金、
②教育一括交付金、③社会保障一括交付金、④農業・環境一括交付金、⑤地域経済一
括交付金。この5つ以外のものは1千億弱ある。カテゴリーの中で何に使ってもよい。
道路に使おうがトンネルに使おうが、安全基準さえ満たしていれば何に使ってもよ
い。
どのような基準で額を決めるか。過去5年間個別の補助金がいくらいっていたか、
5年間の平均値をとる。つまりこれまでと同水準が交付される。しかも具体的な使途
を限定されずに交付される。
補助金を配分するこれまでの行政において、地方にも国にも大変なコストがかか
る。補助金の業務に多大な人員、時間を必要とする。この経費はかなり削減される。
役所の縦割りが原因で無駄も生じる。例えば、農業集落排水と厚生省の下水道、農道と県
道の2本が通っている等の無駄をそれぞれの地域で整理ができる。概ね2割程度削減
しても、こうした無駄をなくすことで、実際に各自治体で使える額は変わらない。
既存の額から2割引いた額で交付する。
道路特定財源を一般財源化し、そこで、道路特定財源は地方税と国税の2つがある
が、地方に行く額が減らないために①のまちづくり一括交付金で手当てをしている。
(図参照)民主党案では地方で自由に使える部分が大きく、公共事業を減らした
分、中小企業対策や社会保障にまわしている。ニーズに応じて予算が配分される。
■民主議員立法
「雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発のための緊急措置に関する
法律案」については財源確保の必要があるが、この社会情勢が不安定な中、保険料の
引き上げはせずに一般財源から出すべきである。失業保険が切れて、かつ就業意欲の
ある場合の職業能力訓練をするための財源を確保する内容である。政府の雇用保険法
の中味と全く反対である。
本日は最終決定していないが、中小企業に対する貸し付けが非常に厳しい。貸し渋
り、貸しはがしを未然に防止するために、銀行等が貸し付けを行う際、契約内容を書
面の形で貸し付け先企業に交付すること、またその内容を相手企業によく説明する義
務を課すといったことを織り込んだ議員立法の準備をしていると小沢ネクスト大臣よ
り報告があった。
【記者】波及効果による雇用増
【政調会長】波及効果は100万人に入れていない。例えば、30人学級推進で、12万人
の雇用増、国費で960億円を支出。国費ベースで必要な額を盛り込んでいる。
建設費は単年だが、人件費は継続である。グループホームを作る建設従事者の
雇用は含まれていない。学校の耐震構造やグループホームなど急ぐ案件、新しい
公共事業に振り替えているところがあるが、それらの雇用増は入れていない。
大幅に公共事業は減らしているが、トータルでは8%程度の減少にとどまる。事業
全体では2兆円余を削減しているが、我々は入札制度の改革などを行うので、全体の
事業量は8%しか減少していない。当然地方で使える小規模のものが増えるので、大
手が中抜きをすることも減らせるし、何よりも途中に政治家や役人が甘い汁をすう分
を抜かせれば、実際の現場の建設労働者の数とそこに行くべき人件費は、変わらずに
済むと考える。これが自民党にはどうしてもできない。
【記者】野党4党の医療費自己負担3割化凍結法案について
【政調会長】最大公約数を4党一致して出すという整理。窓口負担が2割から3割に
増える部分について当分の間凍結という法案を来週にも条文整理がつけ、提出する予
定。
【記者】予算規模について
【政調会長】率直に言って党内両方の意見があった。現下の経済状況だから、もっと
財政出動すべきという意見もあるし、逆にこれだけの財政赤字を抱えている中なの
で、少しでも減らすべきだという意見もあった。与野党できちんと整理すべきは、額
の問題以上に何に使われているのかのほうがもっと重要である。額が大きくても使途
が間違っていれば経済効果は薄い。額が小さくても有効に使えば効果は大きい。野党
という限られた立場では情報量も限られている。従って政府と同じ規模でやったとし
てもこれほど違うのだということを国民の皆さんに知っていただくことを目的にして
いる。政府に使い方を変えるようにせまることが野党としての役目である。
【記者】一括交付金の2割削減の意味は。
【政調会長】国家予算のうち4分の1強が個別補助金になっているが、自治体は国に
補助金を申請するのにかなりの労力を使っている。もし、全面的に一括交付金にした
場合、公務員の数を半減できると総務のネクスト総括副大臣が試算している。この経
費は大幅に削減できる。例えば、仕事の中味を振り返るという意味では、そもそも
200万人の雇用増であったが、公務員の中で、例えば警察官とか、刑務所の職員など
は治安悪化の現下では、人数を増加させなければならない。そういう必要な場所にス
ライドさせている。その結果、予算を増やさずに、必要なところに人が増えるという
組替えを細かく行っている。先ほども話したが、県道の隣に農道をつくるというよう
な
問題も、これらを考慮すると2割程度の削減は可能である。
【記者】民主党予算案を出す意義。
【政調会長】小泉総理は「改革」を連呼しているが、実際には何も変わっていない。
省庁
別のシェアも変わっていない。情報や人手の少ない野党でもここまで大胆に変
えられる。情報のない野党でも、ここまで実際雇用に結びつくものを引き出せる。自
民党では何故変えられないのか、予算委員会で明らかにしていきたい。
正直なところ、何年も前から野党第一党として予算案を編成すべきと指摘されてき
たが、個人的には躊躇していた。与党は財務省総体をあげて編成している。政府が何
千人で行っているところを民主党は数名の議員とスタッフで行っている。しかし、国
民の皆さんが求めているのは、細かい数字ではなく、税金をどのように使おうとして
いるのか方向をできるだけ具体的に示すことである。率直なところ、全てをきちんと
細かくチェックできてはいない。大きな方向性としては整合性がとれるように整理を
している。国民の皆様に小泉内閣の予算と民主党の予算のどちらが国民の暮らしに役
に立つのか判断の材料を提供はしている。今年初めての試みであるので、さらに国民
の皆様に分かりやすく提示することを模索していく。
以上