[「共謀罪」・・・犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十三回国会閣法第二二号)についての質疑]
○石原委員長
これより会議を開きます。
第百六十三回国会、内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案並びにこれに対する早川忠孝君外二名提出の修正案及び平岡秀夫君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
各案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省大臣官房参事官辻優君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○石原委員長
御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
○石原委員長
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
○枝野委員
ありがとうございます。
きょうは、今回の提案されている法案が国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約に基づいているという、その関連のことについてお尋ねをしたいと思います。
まず、政府案であれ与党修正案であれ、六条の二で新設をされるいわゆる共謀罪というのは、この条約のどの部分を国内法化したものであるのか、御説明ください。
○伊藤大臣政務官
お答え申し上げます。
この条約の第五条1の(a)の(i)をベースに置いて法律化したものでございます。
○枝野委員
次に、一貫して、政府あるいは与党修正案提出者は、越境性の要件を入れてはいけないんだとおっしゃっておられますが、それはこの条約のどこが根拠になっておるんでしょうか。
○伊藤大臣政務官
お答え申し上げます。
今回対象になっている国際組織犯罪防止条約でございますけれども、この条約の第三十四条2においては、「第五条」「に従って定められる犯罪については、各締約国の国内法において、第三条1に定める国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める。」と規定しておりまして、このことがベースになっているということです。
特に、この条約は、法の抜け穴というものを巧みに利用して行われる国際的な組織犯罪の実態に適切に対応するために、国際的な組織犯罪の防止に特に有効であり、またその取り締まりの必要性が特に高い行為類型については、国際的な性質の存在を要件とすることなく犯罪とすることを各国に義務づけたものでございます。
○枝野委員
では、この条約の三十四条2の主語は何ですか。
○伊藤大臣政務官
御質問は第三十四条の二項についての御質問だと思いますので、この主語は、「第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪については、」というところが主語でございます。
○枝野委員
このうち、六条、八条、二十三条はきょうの質問とは直接関係ありませんので、先ほどの共謀罪との関連で言えば、正確に言いますと、第五条の規定に従って定められる犯罪については、これが主語であるということでいいですね。
○伊藤大臣政務官
そのとおりでございます。
○枝野委員
では、第五条の規定に従って定められる犯罪とは何ですか。
○伊藤大臣政務官
お答え申し上げます。
重大な犯罪を行うことを合意する等について犯罪としているものでございます。
○枝野委員
これはむしろ法務省かもしれませんが、この場合、行われる犯罪行為の実行行為は何ですか。
○杉浦国務大臣
重大な犯罪を行うことを合意することでございます。それが一つの犯罪として処罰される。
○枝野委員
そうなんですね。五条によって犯罪とされる行為は合意という行為なんですね。合意が実行行為なんですよね。
合意については国際的な性質と関係なく定めると読むのが適切なのではないですか、法務大臣。
○杉浦国務大臣
委員のお尋ねは、この規定が、犯罪の実行行為である共謀行為それ自体に適用があることは明らかでありますが、御質問は、このような理解を前提とした上で、共謀等の対象となる犯罪について、国際的な性質と組織的な犯罪集団の関与を要件とすることは禁止されていないのではないかという点にあると理解しております、間違っていたら御指摘願いたいのですが。そのような解釈は、私どもは許されないものと考えております。
すなわち、条約三十四条二項は、ただし書きにおきまして、「第五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される場合は、この限りでない。」と規定しておりますけれども、この第五条の「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件は、この条約の審議の過程で、我が国が共謀の対象犯罪の要件に加えることを提案したものであります。また、条約第五条の3におきまして、「組織的な犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪を適用の対象とすることを確保する。」こう規定されていることからいたしますと、条約三十四条の2のただし書きによってその要件を加えることが例外的に許されているのは、共謀の対象犯罪についてであることは明らかでございます。
したがって、条約第三十四条の2本文の規定による禁止は、単に共謀行為だけでなくて共謀の対象犯罪にも及ぶことは当然でありまして、そのように解さなければ、ただし書きは全く意味を持たない規定となることは明らかであると考えられます。
○枝野委員
今の説明、わけがわからないんですけれども。
いいですか。では、逆の聞き方をしましょうか。
この条約三条は、適用範囲について、「この条約は、別段の定めがある場合を除くほか、次の犯罪であって、性質上国際的なものであり、」云々かんぬん「について適用する。」と規定をしております。
先ほど来問題になっている三十四条では、五条、六条、八条、二十三条がすべて、国際的な性質とは関係なく定めるとなっておりますが、そうすると、この三条の1はどういう意味があるのか、説明をしてください。
○石原委員長
答弁者は挙手をお願いいたします。
伊藤外務大臣政務官。
○伊藤大臣政務官
お答え申し上げます。
この条約第三条は、条約の適用範囲を規定するものでございます。次に掲げる犯罪、すなわち(a)の、組織的犯罪集団への参加の犯罪化について定める条約第五条、犯罪収益の洗浄の犯罪化について定める条約第六条、腐敗行為の犯罪化について定める条約第八条、司法妨害の犯罪化について定める条約第二十三条の規定に従って定められる犯罪及び(b)の重大犯罪、すなわち、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪のうち、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を満たす犯罪に限って条約が適用されるのが原則でございます。
しかし、この条約第三条に規定されているように、別段の定めがある場合には、このような国際性と組織性の要件を満たさなくとも、この条約の別の条に規定されている別段の定めに従って条約が適用されることと解されます。
そして、この別段の定めの一つが、先ほどお答えいたしました条約第三十四条第二項であることから、共謀罪を犯罪とするに当たっては、この条約第三十四条第二項の定めに従う必要があり、国際性の要件を付することは許されないと解されるわけでございます。
○枝野委員
ですから、それはわかっているんです。わかっていた上で申し上げているのは、五条も六条も八条も二十三条も、皆さんの解釈によると、三十四条で国際性、越境性の要件を要しないと完全になるんだと。では、国際性の要件が必要な三条一項があるがために、適用範囲が、越境性を持っていないものには対象にならないんですよという効果をもたらすのはどこの規定ですか、これを聞いているんです。
○石原委員長
答弁者は挙手をして御答弁を願いたいと思います。
外務省、法務省、どちらが御答弁をされるのか、お願いを申し上げたいと思います。(発言する者あり)
枝野君の質問に対しまして御答弁をされる方が決まるまで、速記をとめてください。
〔速記中止〕
○石原委員長
速記を起こしてください。
外務省伊藤外務大臣政務官。
○伊藤大臣政務官
お答え申し上げます。
犯罪化に関する規定は第三十四条の2でございます。
○枝野委員
三十四条の2とおっしゃいましたでしょう。だから、三十四条の2が別段の定めなんでしょう。三十四条の2が別段の定めで、別段の定めを除くほかと書いてあるわけですよ。では、別段の定めを除いてこの三条の1が適用されるのはどこですかと聞いているんですよ。(発言する者あり)
○石原委員長
私語は慎んでください。
○伊藤大臣政務官
別段の定めの規定でございますけれども、別段の定めに当たる規定としては、先ほどお答えしました組織的な犯罪への参加の犯罪化等について定める条約第三十四条第二項の規定のほか、犯罪人引き渡しについて定めた条約第十六条第一項の規定や、法律上の相互援助について定めた条約第十八条第一項の規定が挙げられます。
○枝野委員
通告外ではないと私は思っていますが、前回、こちらの手のうちをさらしてここを問題にしていますということを最後にこの委員会できちっと申し上げていて、このことについて聞きますというのですから、今ぐらいの話のところは出てくるのは当然の前提で準備をしていただいてというか、当然、理解をして法案を出してこられているんだろうという範囲であるというふうに私は思っております。
今、そうです、御指摘のとおり、三十四条という別段の定めを除くと、国際的な犯罪の協力であるとか引き渡しであるとか、いわゆる捜査手続の協力のところについては適用除外の三十四条はかぶらない。逆に言うと、そこにしかこの三条の1の適用範囲というのはかぶらないんですね。
だとすると、普通の法律の定め方からすると、これは、一番最初に五条があるんですよ。組織的な犯罪集団への参加の犯罪化、この条約の一番の柱のところは、この五条の組織的な犯罪集団への参加の犯罪化という実体法部分のところこそが一番中心的な部分であって、それを実体法的に各国の国内法で犯罪化をしても、それだけではもちろん実際の犯罪の抑止に十分ではない場合がある。当然のことながら、手続法部分でも国際協力をしなきゃいけませんねということがついてくる。手続法の部分の方がむしろ二次的である。
だとすると、その二次的なところにしかきかないような三条の規定で原則は越境性を要するということを書くというのは、物事はあべこべではないですか。普通の法令のつくり方からすれば、むしろ、メーンである組織的な犯罪集団への参加の犯罪化のところについての規定が原則であって、派生する部分のところについてだけは縮小して、犯罪の捜査のところだけは越境性の要件を要しませんというのが、むしろただし書きでつくのが普通の、これは別に日本の法制のつくり方ではない、条約のつくり方としても基本的な考え方ではありませんか。どうですか。
○伊藤大臣政務官
捜査協力は別段の定めの一つでございまして、それ以外のすべてについて原則が適用されるということでございますので、御理解賜りたいと思います。
○枝野委員
逆でしょう。三条一項の原則の方が犯罪捜査の協力の方に適用されて、一番の中心である、いわゆる共謀罪の部分のところ、犯罪化の部分のところが別段の定めで例外にされているというのはあべこべじゃないかと言っているんですよ。
○伊藤大臣政務官
議員の御質問でございますが、あべこべかどうかという御質問ですけれども、私どもといたしましては、この第三条一項は、この条約の適用対象となる犯罪を、まず、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものと限定しておりますけれども、同時に、別段の定めがある場合には例外を認めているという構造になっております。その上で、この別段の定めを認めるとの規定を受けて、第三十四条二項で、条約創設犯罪については、各締約国の国内法について、国際的な性質または組織的な犯罪集団の関与と関係なく定めるということを義務づけているわけでございます。
この規定は、条約の文理解釈や起草経緯からも明らかなように、国際的な性質または組織的な犯罪集団の関与の有無を問わず、すなわち、国際的な性質または組織的な犯罪集団の関与の存在を条件としないで犯罪化するということを義務づけるというふうに解されるわけでございます。
○枝野委員
文理解釈は、先ほど申したとおり、またこの後詰めますが、文理解釈としてはあべこべです。
それから、条約の締結過程の話をおっしゃるんだったら、審議をとめて、今まで言ってきている資料を出してください。出してくるまで質問できない。資料を出してください。
その条約の審議プロセスが大事だ。だから我々はその審議資料を出してくれと言うのに、出してこなかったのが今までの審議プロセスじゃないですか。条約の締結のプロセスとおっしゃるんだったら、資料を出してください。質問できません。(発言する者あり)
○石原委員長
枝野君、申しわけございませんが、質問の要旨をもう一度だけ簡単にお願い申し上げます。
○枝野委員
いいですか、今の御答弁のうち、文理解釈という話についてはこの後詰めます。しかし、文理解釈とそれから条約の締結の過程ということを根拠としておっしゃいました。この条約の締結過程がどうであったのかということがこの法務委員会で一貫して大議論になってきて、その締結過程の資料を出してくれという話について一切応じてこられなかったので、この審議過程が明らかになってこない。その審議過程ということを根拠にされるんだったら、資料を出してから話を進めたいと思います。
以上。
○石原委員長
ただいまの質問で質問の御趣旨はわかったと思いますので、御答弁をお願い申し上げたいと思います。
外務省伊藤外務大臣政務官。
○伊藤大臣政務官
起草過程につきましては、今まで、可能なものについてはすべて提出しております。非公式協議等公開できないものについては、それがわかるように、できる範囲で資料を提出しておりますので、御理解賜りたいと思います。
○枝野委員
少なくとも私たちのところに、交渉経緯において、条約の締結プロセスにおいて、なぜ今のような解釈に必然的になるのかという説明は受けておりません。
説明をしてください。どうして今のようなことになるんですか、条約の締結プロセスから。
○石原委員長
条約の締結過程を答弁されたので、条約の締結過程を明らかにしろという質問でございますので、お答えいただきたいと思います。(発言する者あり)
御静粛に願います。(発言する者あり)御静粛に願います。
○伊藤大臣政務官
条約の締結過程でございますが、実は、もう既に提出の資料の中から引用させていただきますけれども、共謀罪等については、国際的な性質と関係なく定めるとする本条約第三十四条2については、当初、本条約第三条で定められている条約の適用範囲に関して議論がなされたわけでございます。
すなわち、アドホック委員会、条約起草のための政府間特別委員会、第七回の会合等の審議において、性質上国際的なものを本条約の対象とする犯罪の要件として加えるべきであると主張した国は、本条約が国際組織犯罪を防止する条約である以上、そのような条件を加えるべきと主張したわけでございます。
これに対して、日本を含め、性質上国際的なものを要件とすべきでないと主張した国は、本条約が国際組織犯罪を対象としていることは明らかであるとしても、そのような犯罪を防止し、その捜査及び訴追に関する国際協力を確保するためには、一律に厳格な要件を定めることは適当ではなく、国際組織犯罪の実態に対処できるような適用範囲を確保する必要があるため、そのような条件を加えるべきではないと主張したわけでございます。
その後、このアドホック委員会第八回会合の審議において、シンガポールから、条約の原則的な適用範囲については、性質上国際的であり、かつ、組織的な犯罪集団が関与する場合に限定するとともに、必要に応じて、例外として、今話題に出ました、別段の定めを置くことを内容とするという提案がなされたわけでございます。
この提案については大きな異論が出なかったわけでございますが、別段の定めとして、どのような事柄について、どのような要件とするかについては、さまざまな意見が参加国からあったわけでございます。
ただし、本条約が犯罪化を求める犯罪の構成要件については、仮に国際性、組織性を要件とすると、対象となる犯罪が組織犯罪の実態に照らして不当に狭くなる上、早期かつ的確な検挙、処罰が困難となるとの考え方から、我が国を含め、国際性及び組織的な犯罪集団の関与を要件としないことを支持する国が少なくなかったわけでございます。
こうした経緯を踏まえ、アドホック委員会第十回会合において、フランスから、条約が犯罪化を求める犯罪の規定においては、国際性及び組織性の要件を含むものと解釈してはならない、英語で言いますと、シャル・ノット・ビー・コンストルードと提案がなされました。
そこで、議長がこれを簡潔、肯定的な文に改めるように求めた結果、現在の本条約第三十四条2の規定と同じく、国際的な性質または組織的な犯罪集団の関与と関係なく定める、シャル・ビー・エスタブリッシュド、間がありましてインディペンデントリーとの文言に改められたということでございます。
もっとも、現在の本条約第五条の共謀罪等の犯罪化においては、組織的な犯罪集団の関与を条件とすることは許されるところ、フランスの提案のままでは条約の規定相互に矛盾が生じると解されることから、アメリカから、現在の本条約第三十四条2の末尾に、現在の本条約の第五条の規定に従い、共謀罪については組織的な犯罪集団の関与を要件とすることが禁止されないようにという趣旨の文言を加える提案がなされたわけでございます。
このアメリカの提案とあわせたフランスの提案に対して、ごく一部に反対意見はございましたけれども、我が国を含む多数の国がその内容を支持し、基本的な点については合意に至ったということでございます。
さらに、この内容に照らして、本条文の位置を適用範囲ではなく条約の実施の部分に移すことが提案され、異論なく支持された結果、現在の本条約第三十四条2として規定をされたという経緯でございます。
○枝野委員
今のお話は、三十四条の2が置かれた経緯は御説明をいただきました。私が今申し上げているのは、この三十四条の2の読み方についてお話をしているんです。
三十四条の2、第五条に従って定められる犯罪、つまり共謀が犯罪とされるということについては国際性と関係なく定めると書いてあるんですが、つまり、共謀が国内だけで完結をしている、国内で、日本の関係者だけで、外国から来たわけでもなくて共謀がなされた場合であっても、国際的な犯罪を行うということの共謀が行われたならばこれは処罰しなければいけないと読むのが、この三十四条の2の文理からは自然であるということを申し上げているんです。
それに対して外務省は、いや、その共謀の対象になっている犯罪そのものも国際性、越境性の要件を要しないんだ、そういう要件を置いてはいけないんだということをおっしゃっているんです。そのことが今の審議過程の中でどういうふうにあらわれておるのか、説明をしてください。
○伊藤大臣政務官
そもそも、本条約第五条1(a)の(i)に言ういわゆる共謀罪というのは、重大な犯罪を行うことを合意することでございまして、この点、共謀の対象となる重大な犯罪と合意することを切り離して考える、例えば、重大な犯罪に国際性の要件を付し、そのような重大な犯罪を合意することには国際性の要件を付さないと考えることは、極めて不自然だというふうに考えるわけでございます。
また、本条約第三十四条2の趣旨は、前段で私が申し上げましたように、法の抜け道を巧みに利用してさまざまな国において活動を展開している組織的な犯罪集団の性格にかんがみれば、本条約第三条1の規定にかかわらず、問題となる犯罪について国際性等の要件を付してはならないということでございます。したがって、共謀行為それ自体のみならず、その対象となる犯罪についても国際性の要件を付すことはできないと解されるわけでございます。
本条約第三十四条2の解釈については、この条約が採択される前から共謀罪の規定を有している米国及び英国からも、共謀行為それ自体及び共謀の対象となる犯罪、いずれについても国際性の要件を付すことはできないと理解しているとの回答を得ているところでございます。
○枝野委員
今のお話の最後のところをまず伺います。
この間の質疑のときには、これは平岡さんでしたか、いや、二、三日前に回答をもらったというお話でしたよ、口頭で。もしこの条約ができるプロセスの中でそういう回答があるんだったら、その証拠を出してください。(発言する者あり)
○石原委員長
御静粛に願います。
議事運営は委員長にお任せをいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
外務省伊藤外務大臣政務官。
○伊藤大臣政務官
今申し上げた英米の回答というのはまさに最近得られたものでございますが、両国とも、この条約のいろいろな過程において、口頭でそのような発言があったことも事実でございます。(発言する者あり)
ちょっと訂正させていただきます。
英米の回答は最近得られたわけでございますけれども、この英米両国とも、この条約が採択される前から共謀罪を持っているということでありますので、そういう国について聞いてみたということでございます。
○枝野委員
国連はいつからアメリカの下部組織になったんですか。英米はそういう考え方を持っているかもしれないけれども、まさに条約の締結過程というのは、各国がどう考えて、どういうふうに理解をし、そしてどういうことの前提で合意が調ったのか。英米がそういう主張をされていたとしても、それに対する違う意見もあったりしたから、フランスなどが折り合うのを出してきたわけでしょう。
それで、その折り合うのがどういうことなのかということについて、明確に、そのすべてについて国際性を要しないと言っている国と、いや、それではだめなんだと言っている国との間でどういう、例えば何らかの申し合わせとかなんとかがあったというんだったら、それに基づいて解釈するということがあってもいいでしょう。しかし、一方当事者はこう言っていましたという話だけでは何の説明にもならない。
念のため申し上げますが、先ほど来、変なやじが飛んでいますけれども、私は別に政務官に恨みはありません。本当に事務的なことだったら局長に出てきてもらって回答していただいてもいいです。しかし、前回の審議において、これは政治レベルで答えてもらわなきゃならない答弁だと言っているにもかかわらず、差し出がましくあの局長が手を挙げて出てきて回答している。こういう前例があるから、政府参考人として置いたら、本来政治ベースで答えるべきことまで出てきて回答される、だから政府参考人は要らないとやらざるを得ないんですから。それは外務省の責任だということを強く与党に対して申し上げておきたいというふうに思います。
いずれにしても、しょせん英米がそう言っていたという話なのであって、条約の解釈を、日本はアメリカの属国ではありませんから、アメリカがどう解釈しているのかということで解釈をしなければならないなんということは全く必然性はない。まあ与党の皆さんはアメリカの属国のつもりでいるのかもしれませんが、私たちはそうではありませんのでということを申し上げておきたい。
その上で、改めてもう一回伺います。
今度は文理の問題であります。三十四条で申し上げている条約の実施の二項のところは、五条の規定に従って定められる犯罪については、普通に考えれば、この犯罪というのは共謀罪であります。共謀そのものが犯罪であるということです。共謀罪、共謀したこと自体が犯罪になるといった場合に、その前提となっている犯罪、共謀した罪、つまり五条の条文で言えば重大な犯罪、重大な犯罪が国際性を帯びていたとしても、共謀罪の実行行為そのものは日本の国内において完結をされていることです。
つまり、外国のあの組織とこういうふうに金を行き来もさせて、あそこから資金をもらってそれでこういう犯罪をしようとか、あそこの外国人を今度こういうふうに入国させてそれでこういう犯罪をやろうとか、あるいはあべこべに、日本ですべての共謀をして、いつごろあの国に入っていってこういう犯罪をしようとか、そういったことを共謀したとしても、その共謀の実行行為自体は越境性を満たしません、越境性を持ちません。
そういった場合に、それは犯罪にならなくていいんですよということになったとすれば、確かに法の抜け道ということになるかもしれない。日本においてすべての計画、共謀を全部しておいて、用意ドンで実行に走って外国に被害をもたらす、こういうことがあったりしたらいけないだろうというふうに思います。あるいは、日本の国内で全部共謀をしておいて、さあ、いよいよ実行だという直前になって、外国から人がどっと入ってきたりとか武器がぐうっと持ち込まれたりとかして、それで犯罪が起こりました、それを、越境性の要件があるからということで、共謀段階で食いとめることができませんでした、こういうことでは法の抜け道になるでしょう。
ですから、私たちの解釈のように、共謀という行為そのものに越境性がなかったとしても、その共謀した犯罪が越境性のある犯罪であるならば、それはちゃんと国内法で取り締まらないと法の抜け道になるということで、三十四条の2というのは非常に合理的な規定であるというふうに思います。
しかしながら、先ほど来、明確なお答えがいただけないように、三条で、越境性のある犯罪がこの条約の対象だ、条約の名称も国際的な組織犯罪の防止に関する条約だとなっているのに、一番のコアのところについて、国際的な犯罪じゃなくてもいい。そんなことの方がよほど不自然じゃないか。だとしたら、この文理の解釈として、よほどの根拠、理由を示さなければ、私が今申し上げたような解釈をするのが当たり前ではないか。法務大臣、どうですか。
○杉浦国務大臣
お尋ねの趣旨は、共謀の対象となる重大な犯罪についても国際的な性質のものに限定することを禁止しているというなら、その実質的な理由を明らかにしろ、こういう趣旨に拝聴いたしたんですが、現実の社会では、個別具体的な犯罪行為だけを見ますと、単独犯であったり、犯罪行為自体は一国内にとどまるために性質上の国際性を認めがたいけれども、その背後に実際には国際的な犯罪組織が存在し、あるいは、国際的な組織犯罪に発展する可能性もあると考えられる場合もございます。
特に捜査の初期の段階においては、いかなる犯罪の共謀がなされているのかについて、その犯罪の背後関係を含めまして、それが国際的な性質を有するか否かが明らかでなく、さらに捜査を進めてもその立証が容易でない場合が少なくございません。
そもそも、国際組織犯罪防止条約、この条約が犯罪化を義務づけている共謀罪は、組織犯罪対策上有効性があることから、これを犯罪とする罰則を各国が標準装備すべきものであると考えられたために、その犯罪化が義務づけられたものでございます。
さきに述べたような現実を踏まえますと、仮に、共謀罪を犯罪とするに当たって、その対象犯罪を国際性を有するものだけに限定いたしますと、組織犯罪の実態に照らして、対象となる犯罪事象が不当に狭くなる上、早期かつ的確な検挙、処罰が困難となり、ひいては、この条約の趣旨でございます一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するという趣旨、目的を没却してしまうことになりかねません。
そこで、国際的な組織犯罪に対する効果的な対処を確保するため、条約三十四条の2は、条約が犯罪とすることを義務づける共謀罪について、国内法でこれを犯罪とするに当たっては、共謀の対象となる犯罪を含めて、国際性の要件をつけることを禁止したものと考えているところでございます。
○枝野委員
いいですか、この法案はこの条約の国内法化である、だから、非常に広範だけれども、条約に基づいたことでやらなきゃならない。国内に限定された越境性を要しない犯罪であってもさらに厳しい取り締まりをしなきゃならない、一定の要件のもとで。そういうものがあるかもしれないということは、それは否定をしません。だけれども、それは本法とは別に、まさに国内法としてやればいい話で、あくまでも今の法律は条約を国内法化するということで、さまざまなその他の要件のところが緩んでいるわけです。
さて、この条約です。繰り返しますが、条約で、各国の国内法、国内完結のものについてああしろこうしろだなんということは、まさに主権の侵害じゃないですか。そもそも、そんなことを国際社会がやるはずないじゃないですか。そんなことをやりますなんという話自体、あったらおかしいんですよ、内政干渉なんですよ。
だから、これは国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約なんです。国際的な組織犯罪の防止という目的に関したときに、それは、例えば先ほど申したとおり、共謀という事実は国内で完結しているけれども、その共謀の結果の、行われる、予定されている犯罪が越境性を持っていたら、それはちゃんと取り締まらないといけないでしょう。それはそうだと思います。
しかし、まさに共謀も全部国内で行われている、行われた犯罪も全部国内である、そこで共謀されている犯罪もすべて国内的に完結をされている、その犯罪について、どうして国際的な組織犯罪の防止のために取り締まらなきゃならないんですか、この条約で規制しなきゃならないんですか。
それは別途国内法で議論するということを否定するつもりは全くありません。しかしながら、この条約の解釈としてそんなことが出てくること自体が、そもそも論理矛盾じゃないですか。表題と矛盾をしているじゃないですか。そして、全部すべて国内で完結をしている犯罪について、別に国内でどう決めようと、国際的な組織犯罪を防止するという観点からは影響を与えるはずないじゃないですか。
いや、そうはいっても、さまざまな意味で法の抜け道を考えるとおっしゃられるかもしれません。でも、そうだとしたら、この共謀罪という法律をつくること自体の原点に返ってまた矛盾が生じますよ。
なぜならば、与党の修正案あるいは政府も従来答弁でおっしゃっているということだとすると、共謀という単なる言葉だけの話で、しかも犯罪の対象になるのは組織犯罪集団だけであるということを繰り返しおっしゃっておられます。組織犯罪集団によって、言葉だけの合意あるいは言葉すらない合意のところで、限定された長期四年以上の犯罪をちゃんと共謀しましたということがいずれにしろ立証できなければ、こういう犯罪を法定しても何の意味もないわけですよ。
組織的な犯罪集団によって長期四年以上の犯罪の共謀がなされたということを立証することができるような条件のときに、その対象になっている犯罪が越境性を持っているのか持っていないのかということ自体、ちゃんと立証できるじゃないですか。逆に言ったら、そこのところで、本当は越境性を持っている国際犯罪なのに、いや、そのことについてだけは立証できません、だけれども、真意に基づいて犯罪の共謀をしました、そしてこの団体は組織犯罪集団です、このことだけは立証できます、こんなばかな話がありますか。
抜け道というと、一般論としては何となくもっともらしく見えるかもしれませんが、国際的な犯罪を犯すというところの越境性を要件にしていても、抜け道には決してならない。大臣、違いますか。
○杉浦国務大臣
御答弁としてはちょっと見当外れになるかもしれませんが、この条約は、百何十カ国が承認しているんですけれども、主権国家が、国際的な犯罪集団による犯罪を抑止しようという趣旨で集まって、長い経過の上で合意した条約であります。しかも、各国はそれぞれの国の基本法制に矛盾しない範囲内で共謀罪は設けなさい、こういうことになっておるわけでございまして、この条約の実施を担保するために、私どもは国内法を制定しようとしておるわけであります。国内法の制定作業をやっておるというふうに理解しておるわけでございます。
共謀罪については、我が国の法制においても共謀を罪としているものも幾つかあるわけなんですが、英米法なんかは、コンスピラシー、共謀そのものをすべての犯罪について禁止しておりますから法制は違うわけですけれども、しかし、我が国としても、組織集団の重大な犯罪についての共謀を処罰するということは、今まで共謀罪が付せられていた、共謀が罪となっていた罪との均衡等から見て、基本法制と矛盾しないということで、この共謀罪を法定することを御提案しているんだと私は理解しておるんです。
先生のおっしゃっている趣旨は、必ずしも定かに私、理解しているかどうかわかりませんが、先生のおっしゃっている趣旨からいっても、この共謀罪を制定することは我が国の国内法制の整備として妥当だということにならないんでしょうか、こんな感じがするんですけれども。
○枝野委員
なりませんね。こんなに広範な、私文書偽造とか公職選挙法違反とか政治資金規正法違反とか、どぶろくをつくるとか、そういうところまで対象にされるんでしょう。しかも、ぎりぎりでも予備とかが要るんじゃないかと我々は言っていますけれども、そういうことも今のところだめなんでしょう。そんな、合意をしたという証拠、つまり、本気で言ったのか、うそで、冗談で言ったのかもわからないような話の、しかも供述証拠しか出てこない、つまり自白に頼って立証する、こういうことでやるんだったら、相当絞らなきゃいけない。
英米は共謀だけで全部犯罪にしますと。それは、大臣御承知のとおり、英米法の基本体系は我々と違うじゃないですか。英米法は、我々よりももっと弾劾主義を徹底しているじゃないですか。我々の国は、条文を見ると弾劾主義を徹底しているように見えるけれども、現実的には糾問的じゃないですか。
アメリカでは、例えば、弁護士が立ち会わないと取り調べができないというような制度もたくさんあるじゃないですか。陪審制じゃないですか。取り調べをするという前提じゃない、初めから、捜査の段階から、被告、弁護側と捜査機関側とが対等な条件で捜査をするというところだから、いや、それでもあるかもしれませんけれども、日本のような密室で取り調べをするという国とは違って、自白強要というおそれが少ないと一般に言われる、そういう制度をとっている。だからこそ、自白以外になかなか証拠のない共謀というだけで処罰をするということも国内法体系としては一応あり得るかもしれない、いいことだとは私は思わないけれども。
しかし、我が国は、残念ながら、英米法の国々とは刑事訴訟の少なくとも運用は大分違うんですよ。英米と同じようにやるというのなら、刑事訴訟法も英米にそろえてください。弾劾主義の徹底をしてくださいよ。それならば話はわかりますよ。ところが、こっちだけは英米の話。日本の刑事訴訟とかというのは、むしろ大陸法的な要素が物すごく強い。だけれども、こっちは大陸法の要素でやる、こっちは英米法の要素でやる、こういう矛盾したことをやっているからおかしなことになると言っている。
時間もなくなってきますので、最後に改めて申し上げます。
少なくとも、三十四条の2という条文を、繰り返します、第五条の規定に従って定められる犯罪については、国際的な性質とは関係なく定める、この条約は守りましょうよ。守って結構です。だから、共謀という事実については、国際性を満たしていなくても、それは犯罪にするということでも結構です。
しかしながら、そもそもこの条約全体が国際的な組織犯罪を防止するという目的なんですから、その目的に照らしても、今の文言とは決して矛盾しない。共謀の対象になった犯罪そのものについては国際性、越境性の要件を課すということ、我が国は、条文を読んだらそう判断しましたので、そういう法制をしましたと言っても、どこの国からも非難は、我々におっしゃれないような裏の密約でもない限りは、条文の解釈としては何の問題もない。文言を素直に解釈いたしました、この条約の趣旨、目的から素直に解釈をいたしましたと言えば、何の問題もない。
したがって、条約で国際的に約束をしているという理由は、越境性の要件は外せという、我々の主張を排除する根拠としては全く成り立たないということを申し上げて、次の質問者に譲りたいと思います。
ありがとうございました。
<他の議員の発言部分省略>