[犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案についての答弁]
○倉田委員
次の質問へと移っていきますけれども、共謀罪の対象となる犯罪について、民主党の先生方はもともと、こんな質問をなさっておりました。十七年の十月のことだと思いますけれども、国際的組織犯罪防止のために重大な犯罪として、ここの中に規定されなければならない犯罪だと到底思えないものもいっぱいある、やはりもっともっと抑制的にこの犯罪を特定していくことが必要だろうと思う、あるいは、重大な犯罪についても、一律に長期何年ということだけじゃなくて、本来はどういう犯罪が条約で目的としていることに沿うものであるのか、一つ一つの犯罪の中身の議論をしなければならない、これは平岡議員でございますけれども、こんなこともおっしゃっておりました。
このような内容からしますと、民主党さんとしましては、国際組織犯罪の防止という趣旨に従って、国際的な犯罪組織が犯すような典型的な犯罪だけを対象とすべきであると考えておられるのではないかと私は思うわけでございます。
しかし、今回の民主党案によりますと、共謀罪の対象を長期五年を超える犯罪だけ、こういうことにしておりますと、四年以下の懲役とか五年以下の懲役という刑が定められている犯罪は除外されてしまうわけであります。例えば人身売買の罪、これは刑法二百二十六条の二の第一項でございまして、三月以上五年以下の懲役、あるいは出資法第五条の高金利受領罪、これは五年以下の懲役、あるいはいわゆる入管法の集団密航者を不法入国させる罪、これは五年以下の懲役、こういうものが対象から除外されてしまうということになると思いますね。
しかし、これらの犯罪は、それこそ典型的な国際組織犯罪ではないかと思うんです。こういうものを外してしまうということに合理性があるのか、こういう疑問を持ちます。大きな穴のあいた法案になってしまうのではないか、こう考えるわけであります。
それから、これらの犯罪が、今例を挙げた三つの犯罪が入るようなものになっていなければいかぬと思いますけれども、どうでしょうか、その点について。
○枝野委員
私どもの修正案は、政府提出の法律案に対する修正案をお出しいたしました。政府提出の法案は、いわゆる国際犯罪防止条約を国内法化する法律案であるというふうに理解をいたしておりますし、そうした説明を聞いております。
御指摘のとおり、私どもの線引きをいたしますと、いわゆる典型的に国際的な組織犯罪と思われる犯罪の幾つかが長期五年超に該当しないというものが出てまいりますが、例えば今御指摘にもございました集団密航的な話の部分の出入国管理法などでは、集団密航者を本邦に入らせる行為の準備罪、あるいは収受した者の予備罪等、個別具体的な法律で賢明な政府・与党の皆さんが、国際的な組織犯罪に該当する問題のある事案については既に立法をされているものと理解をいたしておりますし、さらに、必要があって本法では対象から外れるものについては、個別の法律で予備罪等をつくられればそれで問題はないと。
この法律は、条約で一律に一定基準以上のものについては共謀罪をつくろうということに基づいてのことであれば、そうした個別のものが外れるということについて別法できちっと対処するということでいいし、逆に、その別法で対処すべき部分のところまでここの修正に載せるということは、本法の修正案の趣旨としてもおかしいというふうに考えております。
○倉田委員
この条約の目的は、やはり人々が国境を越えて交流をする、こういう世界になった、それで、共通のものをつくっておこうではないか、こういう考え方から出ていると思います。私は、これは決して後ろ向きのことだけではなくて、人類が理想とするいわゆる世界連邦とか、こういうものに向く方向ではないか、こんなことを考えているわけでございます。
さらに聞いていきます。
今回の民主党の修正案の、国際性を付すという条件の問題ですけれども、例えば、日本のカルト集団が日本で無差別大量殺人を実行しようと計画をしておりました、こういう場合を想定しまして、この計画を、まずどこで計画を立てたか。外国で立てたときは、これは国際性があるということになるんでしょうね。日本でやりますという計画を外国で立てたときには民主党さんの案で当たるんでしょうね、該当する。
しかし、日本のカルト集団が日本で計画を立てて日本で実行しようとした、この場合は共謀罪は成立しない、こういうことでよろしいんですか。
○枝野委員
倉田先生御指摘のとおり、国際化の時代、人が交流する時代、特に重要な問題については国境を越えて統一のルールのもとで物事を進めていくということは理想でありますし、そういった方向に近づいていくことは重要だと思います。
ただ、例えば今御指摘されましたカルトというものも、ではカルトとは何なのかということを考えてみますと、例えば、EUにおいては、新しい型の宗教組織による法の侵害に関するEU議会決議というのが一九八四年にあるそうでございまして、それに基づくと、フランスでは、日本においては適法とされて大々的に活動をされている宗教団体がカルトと扱われているというようなことも言われております。
したがって、各国ともベースになる法制度が違う以上は、そのベースになる法制度との矛盾のない範囲内で国際的な共通化をしていきませんと、ではEUでカルトとされていると日本でもそうしないといけないのかというような議論になりかねないということで、逆に我が国の信教の自由に関して問題が生じるのではないか、こういうこともいろいろなところであり得るわけでございます。
その上で、今御指摘をいただきましたとおり、我が党の修正案に基づきますと、性質上国際的なものではない、つまり、日本国内で完結をしているような例えば無差別大量殺人という行為については、本法による共謀罪は成立をしないということになります。
しかしながら、いわゆる無差別大量殺人というケースであれば、殺人罪につきましては、先生も御承知のとおり予備罪が規定をされておりますので、当然のことながら、予備行為のあった段階で、実行に至る前にそれを阻止することが、もちろん証拠関係が収集できた場合でありますけれども、十分可能であるということで、実質的な問題はない。さらに、もし問題があるならば、本当に国内完結しているものについてもさらに法整備が必要であるならば、それはこの条約に基づく法改正とは別に、立法について検討すればいいというふうに思っております。
○倉田委員
カルト集団についてですが、これは私が例として出しました。犯罪実行を目的とする集団の例ということで理解していただければいいと思います。
結局、民主党案によりますと、カルト集団という言葉はやめまして、無差別の大量殺人を日本で実行しようという団体があったとしまして、日本で計画をした、その場合は、この共謀罪、与党案あるいは政府案では成り立つんでしょうけれども、民主党案では成り立たないことになる、これでいいわけですか。
○枝野委員
繰り返し申し上げておりますが、この法律、もともとのベースになっている法律が、条約を国内法化するということで提起をされているわけであります。本当に可罰的違法性があって必要があるということであれば、個別の法律を改正する議論をするのが筋である。
例えば、いわゆるオウムのサリン事件などを考えれば、サリン等による人身被害の防止に関する法律という具体的な法律もございます。さらに、その要件といいますか、必要性があれば可罰対象を広げるとか広げないとかという議論があればいいということでありますし、そもそも、この組織犯罪処罰法の本来の越境的部分とか共謀以外の部分のところで、必要があれば行えばいい。
逆に、国内で完結をしている事件で、犯罪が起こりそうだというようなことをあらかじめ取り締まりができるという状況に捜査機関が情報、証拠を収集しているということは、やはり一定の予備行為がなければ、捜査当局もそれについて把握はできないのではないか。その段階では、今、現状、現行の刑法本体でも殺人予備罪があるのでありますから、十分にこれは対応できる。つまり、被害発生を事前に食いとめることはできるというふうに考えております。
○倉田委員
そういうのも一つの御意見ではありましょうけれども、私が言った大量殺人という極端な例ではなく、人々が国境を越えて行き来することによって、非常に多くの重大犯罪について同じような問題が起こってくる、こういうことからこの条約の締結の必要性が出てくるのではないかと思うわけでございます。
そこで、大分時間がなくなってしまっているんですけれども、ある某国の外国人たちが日本へと住んでいます。それで、その国の人たちの民族の集まりのような、国の集まりのようなことをしました。時たま、自分たちの母国で、テロ行為といいますか大きな犯罪が起こった。それに呼応して、我々もやろうということを共謀して、結社をつくって共謀した。これも当たらなくなっちゃうんですよね、民主党さんの案では。これも個別的につくればいい、こんなような御意見になるんでしょうかね。
○枝野委員
日本の国内、つまり、動機において、海外で何か起こったということが動機としてあるということがあったとしても、その犯罪の関係当事者も全部日本国内にいて、日本国内で謀議が行われ、日本国内で準備行為が行われ、日本国内で犯罪が行われるというケースであれば、それはまさに越境性を持たない国内的な犯罪であります。
先生御指摘のとおり、確かに、あらゆるルールが国際的に共通であればその方がいいに決まっていますけれども、各国の法体系は全部違うんですから、各国の事情に応じて、国内のことはやる。ただ、国境を越えて犯罪が行われるときには、証拠関係含めて国境を越えて存在しているということであるから、そのことについてはできるだけ統一していこうということが私は条約の趣旨だと思っていますので、すべての証拠関係から行為が一国内で行われているということについては、国内的な法律の整備の中で、必要があれば対応するということで十分であると思います。
<他の議員の発言部分省略>