[選択的夫婦別姓制度/婚外子相続分差別の問題について]
○枝野委員
きのうに引き続き、質問をさせていただきます。
きのう通告した二つのテーマの前に、きのう最高裁で、いわゆる光市の母子殺人事件の上告審審理が弁護人が出頭しないということで流れた、こういう事件が起こりました。弁護人が死刑廃止論者であるということが背景にあるだろうという報道もなされています。
ただ、これについては、どうして欠席をしたのか、詳細な事実関係を把握する立場にございません。事実関係が不明確なものは国会質疑をしない方がいいと思いますし、また、これがどういう処理になるのかは、弁護士会の自治である懲戒、これは弁護士会の自治の問題でありますので、ここで法務大臣に逆に御見解を言っていただいたらいけない問題だとも思います。
しかし、一般論として、司法に携わる裁判官、検察官あるいは弁護士、例えば現行の法制度、刑事訴訟手続であるとかあるいは死刑制度の是非などを含めて、さまざまな個人的な、特に専門家としての見解があるかと思います。それを法廷外で、まあ裁判官の場合は問題かもしれませんが、いろいろと運動、主張される、これは当然の権利、自由であると思いますが、法廷内の手続等においては、私は、裁判官であれ検察官であれ、当然のことながら弁護士であれ、現行の法体系、法制度を前提として、それに基づいて訴訟行動を行うというのが職業倫理であるし、法のもとにおける役割であるというふうに考えますが、一般論として大臣の見解をお伺いします。
○杉浦国務大臣
一般論としては、先生のおっしゃるとおりだと思います。
法の支配は国の国是でございますので、法の定めるところに従って職責を果たすのは、一般論として当然のことだと思っております。
○枝野委員
まず、私の個人的な見解を念のため申し上げておきますが、私は、仮出獄のない終身刑を導入し、それを活用するということを前提に、死刑制度は廃止をしてもいいのではないか。特にヨーロッパの先進国はそれが常識であるということを考えると、仮出獄のない終身刑の設置というのは絶対的条件でありますけれども、その個人的な意見を前提としながら、しかし、死刑制度を廃止すべきという論者がそのことを背景に訴訟を遅延させるようなことがあってはいけないというふうに思っています。これは逆に大臣の見解を言っていただいては困ると思いますので、お尋ねをしません。
ただ、大臣には、法務大臣は、一般論としてですが、死刑の判決が確定した事件について、その執行についての最終的な判断をする権限が与えられております。大臣も死刑制度についてはいろいろな個人的な御意見を政治家としてお持ちだということを知っているつもりでおりますが、先ほどの法の支配という観点からは、大臣が個人的に立法政策としてどうあるべきかという意見があったとしても、もし当局から法務大臣として死刑の執行についての判断を求められたときには、現行法に基づいて判断をされるのが筋であるというふうに思いますが、それでよろしいでしょうか。
○杉浦国務大臣
先生のおっしゃるとおりでございまして、適正、適切に対処いたします。
○枝野委員
それでは、本来予定していたテーマに入りたいと思いますが、私のライフワークとは言いたくないんですが、というのは、十年ぐらいで決着がつくと思っていましたので、何かライフワークになりかけてしまっていること自体が心外なんでありますが、民法改正についてお尋ねをしたいと思います。
選択的夫婦別氏制度の導入などを盛り込んだ法制審議会の答申から、既に十年以上の歳月が流れております。この間、法制審の答申がありながら、法務省は全くこれを動かしておりません。このような事態をどのように感じておられるのか、大臣の見解をまずお伺いします。
○杉浦国務大臣
この問題につきましては、もう先生御案内のとおり、国民の各界各層でさまざまな議論が、はっきり言って割れているというのが実情だと承知しております。民主党の中も必ずしも全員一致じゃないと思いますけれども、特に私の所属する自由民主党では、この問題になりますと議論が白熱して、党議決定に至らないというのが実情でございます。年齢層でも、どちらかというと古い世代といいますか年配の世代、私の世代の方は反対論が多うございますし、若い世代の方は賛成論の方が多いかとも思うんですよ。さらにそれらの中でも賛否割れているんじゃないかと思います。
この問題も、もちろん申し上げるまでもなく、婚姻制度とか家族のあり方と関連する重要な問題でございまして、私ども法務省としては、大方の理解を得て法案を提出する、すべきだ、現状ではそういう状況ではないと思っております。
先生のおっしゃるとおり、法制審答申から十年が経過しておるわけでございます。法務省は何もやっていないわけではございませんで、法務省のホームページにはその内容を掲載しておりますし、タウンミーティングでも取り上げておりますし、地方公共団体やその他の男女共同参画関係のシンポジウム等においてチラシを配布するなど、多くの方の理解を得られるよう努力をしてはまいっておりますけれども、実情はそういうところでございます。
○枝野委員
大臣はわかった上でおっしゃっておられるんだろうと思うんですが、これはすべてのカップルに別姓を強制しよう、こういう話ではありません。もし、すべての夫婦を別姓にしろというのであれば、国民的なコンセンサスという問題だと私も思います。しかしながら、別姓にしたいというカップルの自由を認めるというのは、これはコンセンサスの問題ではなくて少数意見の尊重、人権の問題であると思います。
人権の問題について、私は、多数決原理だけでは物事を割り切れない。特に人権擁護の役割のある法務省は、少数者の人権を維持する、確保するという観点から、むしろコンセンサスが得られないのであれば、そのコンセンサスを得るための努力をする役割をする、それが人権擁護の役割を担っている法務省の役割であるというふうに思っていますが、いかがですか。
○杉浦国務大臣
法務省としては努力をいたしておることは先ほど申し上げたとおりでございますが、事柄が家族、婚姻制度の根幹にかかわる問題でございますので、日本の伝統、今の同姓制度は武家社会から来ておるようですけれども、長い歴史と伝統のある、その上で議論されていることでございますので、中身は私も承知しておるつもりでございますが、議論が尽きないという実情だと思っております。
○枝野委員
だから、同姓、同じ氏を名乗るということが基本であるということを変えろだなんてだれも言っていないんですよ。歴史と伝統に基づいて同じ氏を名乗っていただいていいんですよ。だけれども、それでは困るという人の自由をどうして認めないのか、だれに迷惑をかけるのかという話であるという根幹をぜひ、大臣はわかっていてそう答えられないんだろうと思いますが、考えていただきたいと思います。
もう一つ、少子化対策ということを一生懸命おっしゃってはおられるようでありますが、別に少子化対策のために選択的夫婦別姓を推進するというわけではありませんが、結果として、選択的夫婦別姓制度が導入をされていないということで結婚をちゅうちょされている若いカップルが少なからずいるということはお認めになりますね。
○杉浦国務大臣
その点、私、ちょっとわからないんです。愛があれば結婚するのであって、制度がどうのこうので結婚するわけではないと思います。
私が知っている人で、若いカップルでこういう例がございます。一人っ子で結婚する、実際結婚しましたが、事実上結婚しただけで、これは一例ですから全部が全部そうだと思いませんが、事実上結婚して籍を入れていない。理由を聞きましたら、子供を二人以上つくって、両方のうちを継げるようにするんだ、それがうまくいったら籍を入れてもいいというようなことを言っていました。
いろいろ結婚する方同士、二人がそれぞれの実情を踏まえて、事実婚にするなり籍を入れるなり、籍を入れた場合でも、私はそういう例は知りませんが、一人っ子で、片方の姓を名乗ると片方のうちは姓が絶えちゃうという場合には、子供をつくって、両親が生きておられれば養子に出したらいいわけで、お互いの家族に対する理解と愛情があれば解決できる問題ではないかと思うんです。
だから、こういう制度がないからちゅうちょするという気持ちは、仮にいらっしゃる方がいるとしても、私は理解できません。
○枝野委員
半分認めていらっしゃるじゃないですか。
つまり、現行制度の中では、法律婚をしたら同じ氏にならざるを得ない、そのことを避けるために、つまり、そうした価値観を持たない、夫婦別の氏でいいじゃないかという価値を持っているがために、現行の法律婚をすると同じ氏を強制されるということを避けるために、今大臣もおっしゃられたような、いろいろな工夫をして事実婚で当面いかざるを得ないということをしていらっしゃる方もいるし、あるいは私の知っているケースですが、同じ相手、カップルで法律婚と離婚とを繰り返すことによって、夫婦の氏を別々にし、なおかつ、子供が複数いるに当たって、その子供たちの氏を別々にするという、その家族にとっての一番望ましいスタイルをとるために非常に手間のかかる手続を余儀なくしているという現実があるわけですね。
それを、なぜそんな面倒くさい手続を余儀なくしなきゃならないのかということが全く理解できない。選択的夫婦別姓さえ認めれば、そうしたややこしい手続をとる必要はないし、私は、たくさんいると申し上げたつもりはありません。少なからずいるのではないかということを申し上げました。法律婚をすれば同じ氏にならざるを得ないので法律婚はできない。だから事実婚だけれども、事実婚という状況の中では、将来のことを考えると子供を産み育てることについてちゅうちょするという方がいないということをおっしゃられるというのは、やはり現状がわかっていないんじゃないかと言わざるを得ないと思っております。
そこで、少し違った観点からこの話について議論をしてみたいと思うんですが、今も大臣、事実婚の話をされました。法律婚と事実婚との間で、氏の問題以外に法律効果は何が違いますか。
○杉浦国務大臣
幾らか差があるようでございます。事実婚の場合であっても、解釈上、婚姻費用の分担義務とか離婚の際の財産分与など、法律婚で認められる効果のうち一定のものが認められております。
違いとしては、民法上はっきりしているのは、問題にされている氏のほかに、婚姻成年擬制、子の嫡出性、親権所在、法律婚は共同行使ですが事実婚は片方、配偶者の相続権等がございます。税法とか、税法では解釈で所得税や贈与税の配偶者控除は法律婚における配偶者に限られている。これは僕はちょっとおかしいと思うんですが。社会保障については、事実婚の配偶者にも遺族給付の受給資格が認められている。こういった異同があるようでございます。
○枝野委員
今お話があった成年擬制の話は、二十歳未満の人にしか意味がない話であります。相続については、お互いに遺言書を書き合っていれば、同じ効果をもたらすことができます。あえて言えば、事実婚と法律婚とで決定的に違いがあるとすれば、税法上の配偶者控除の問題ぐらいでしょうか。今それについては、大臣、これは果たして合理的かというような趣旨の御発言がありました。
そうしますと、私は実際相談をされれば勧めてもおりますが、選択的夫婦別姓がなかなか成立しない、通らない、だけれども氏を一つにしたくないと。いや、日本は既に事実婚でも法律婚とほぼ準ずるような法律効果があります、配偶者控除の問題ぐらいです、したがって、配偶者控除の問題はダブルインカムであれば意味がありませんから、ここも意味がありません、したがって、何もわざわざ法律婚をする必要はありませんということをお勧めしています。
このままこの制度が放置をされていけば、どんどんどんどん事実婚が拡大をしていくということになりますし、私もそうせざるを得ないだろうと思います。そのことは望ましいことだとお思いですか。
○杉浦国務大臣
望ましい望ましくないよりも、これは婚姻の当事者が決めることでございますので、事実上そういう方向に行くとすれば、それはいたし方ないことじゃないか、こう思います。
○枝野委員
大変いい御答弁をいただきました。
私も、戸籍制度とかそういう法律婚制度自体がもはや法的に余り意味がなくなってきているのではないかと思っておりますので、大臣みずからやむを得ないということでありますので、選択的夫婦別姓を望んでいながら法律が通っていないということで困っていらっしゃる方は、大臣もやむを得ないとおっしゃっているんで、今後はどんどん事実婚を勧めていかれればいいんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。
次に参ります。婚外子相続分差別の問題について申し上げたいと思います。
婚外子相続分差別を認め続けている合理的な根拠は何でしょうか。
○杉浦国務大臣
枝野先生、お言葉を返すようですが、事実婚にするか籍を入れるかということは婚姻する本人同士が定めることでございますので、その結果がどうなるかはわからない。それについて法務大臣としてどうこう申し上げる立場にないということを申し上げたということを御理解いただきたいと思います。
婚外子の相続分差別を認め続ける合理的な理由はあるかという点でございますが、現在、非嫡出子は嫡出子の二分の一と法定されております。これについても平等にしていいじゃないかという議論があることはよく承知しておりますが、現在の法律は、嫡出子の立場、つまり法律上の配偶者の間に生まれた子と、そうでない子、典型例は浮気した女性に子供が生まれた場合、一つの例だと思いますが、しかし、その子の立場も尊重しなきゃならない。その立場にも配慮して半分にしたという法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったのだというふうに理解をしております。このような立法理由については、最高裁の判例においても合理的な根拠があるとされております。
ただ、これもいろいろ議論があって、その問題も法制審の答申にも入れたんですけれども、さまざま議論があるところでございまして、私の知っている、私を支持してくださる女性ですと、等しくするのは絶対に反対だ、二分の一、いや、そんなの認める必要もないという人すらいるわけでございまして、これも全く議論が分かれておりまして、非常にセンシティブな問題であるというふうに承知しております。
○枝野委員
ちょっと戻りますけれども、大臣は、法律婚を選ぶのか事実婚を選ぶのか、それは本人の御判断だとおっしゃっているわけですよね。法律婚を選ぶのか事実婚を選ぶのかすら本人の判断なんですから、ましてや、氏を選ぶということについて本人の判断なんだということをなぜおっしゃれないのか。私は、まさに感情問題としか思えない。
それから、今の相続分差別の問題ですけれども、ちょっと聞くと、特に法律婚の関係にある反対配偶者の感情というのはわからないではありません。しかしながら、まさに家族の問題とか夫婦の問題というのは、法律によって保障をされないと維持できないような関係を法律がどれぐらい後押しするのかという問題だと思うんですね。本人同士のまさに愛情の問題でありますから、つまり、婚外性交渉によって子供が生まれるかどうかということについては、法律がどんなに縛ろうと何をしようと、これはまさに夫婦間の愛情の問題であったりそれぞれの個人の倫理観の問題であって、私は法律で縛れる話ではないんだと思うんです。そこのところの部分の問題まで法律で担保しようという、まさに個人としての人間力に自信のない人が別姓を反対したり婚外子差別に反対をしているんだと私は言わざるを得ない。
ちなみに言うと、私は選択的夫婦別姓に賛成ですが、私自身は夫婦別姓にするつもりは全くありません。しかしながら、そういうことでちゃんと夫婦のきずなをつなげるんだ、あるいは婚外子の相続分を半分にしてもらわないと相手が浮気するかもしれない、浮気で子供が生まれるかもしれないという不安はないんだという自信を持っている人たちに対してその自由を認めないというのは、私は僣越な話であるというふうに思っています。
さらに言うと、確かにその反対配偶者、法律婚の関係にある反対配偶者の立場を考えると、一見合理的な話だと思いますが、これはむしろ夫婦の財産制度についての物の考え方をもうちょっときちっと整理するということが必要なんじゃないでしょうか。つまり、夫婦は別産であると同時に夫婦共有財産というものがある。例えば、いわゆるかぎ括弧つきですが、内助の功的に夫婦名義になっているんだけれども、内助の功が大きく貢献をして夫名義の財産になっていました。これがその内助の功を果たしていない女性の子供のところに行くのは感情的に許せない、これは感情的にわからないではない。
でも、そもそも夫婦の財産のあり方として、内助の功が本当に認められるようなケースについて、その財産が夫単独名義になって、夫の相続財産になるということ自体を変えなければいけないんじゃないのか。
つまり、夫婦ともに共同してつくり上げた財産は夫婦共有財産であるべきであって、夫単独あるいは妻単独の相続財産の対象になるというのは、まさに夫婦共同して以外のところで得た財産であるとか、あるいはそれぞれの親からの相続財産であるとか、そういうところに限られれば、今の問題は解決するんじゃないですか、大臣。
○杉浦国務大臣
そういう御意見もあることは承知しております。
私の場合、旧民法の家が、まだ、新しい戦後の民法で変えられる前の時代に生まれ育ったものですから、今おっしゃられたような議論を聞くと抵抗を感じる部分もあるわけなんです。
自民党内の議論を拝見していますと、先生のような議論をされる方もある、正反対の議論をされる方もある、本当にさまざまでございます。
私はどの立場に特にこだわっているというわけじゃございませんが、少なくとも法律は国会を通らなきゃだめでございますので、まず与党で御議論いただいて御了承いただかなければ法案として提出できませんので、その与党の御議論が党議決定に至る、ここに熱心に議論されている方も何人かいらっしゃいますが、それを待たざるを得ない、法務省としてはそういう立場でございます。
○枝野委員
政府の立場からは御答弁いただけないと思いますが、今のお話ですけれども、大臣最初におっしゃられたとおり、民主党の中にも両論があります、そのとおりです。自民党の中にも両論あります、よく知っております。
まさに、今の日本において政党の違いを分けている分水嶺になるテーマとは違うところに、私は、この選択的夫婦別姓などの問題についての線があるんだろうと思います。やむを得ないと思います。
それは、世の中には多種多様なテーマがあって、すべてのテーマについて共通の立ち位置に立つとは限りませんから、ある問題についてで一つの政党ができ上がると、それ以外のテーマについては違っている人たちが同じ党の中にいるというのはあり得る話で、まさにこの問題はそうなっているんですから、むしろこの問題は、まさに党議拘束を外して、党の中の意見をまとめるということよりも、それぞれの立場の中で、国会の中できちっと議論をして進めていくということを、もし、特に改正反対論者の皆さん、自信あるんだったら、どうしてそれをなさらないのか。それで採決しましょうよ。記名投票で採決しましょうよ。それで否決をされたら、また次の機会、次の選挙後に我々頑張りますよ。そういうことをせずに、それで十年も放置をされているということが私は特に許されないと思っています。
最終的に国会の中で、今、国会議員に本当に党議拘束を外して記名投票をしたら否決をされるという状況であるならば、それはそれで一定の現実であると思います。しかし、まさにこれがお互い、与党も野党第一党もお互い党内が割れているということを大臣自身もお認めになっているんだから、まさに党議拘束に適さない問題であるということを前提に物事を進めていただきたいというふうに私は申し上げたいと思っております。
もう一つ、従来、民法改正というと、この婚外子差別と選択的夫婦別姓が大きな問題でありましたが、実は、最近というか、もともとこういう問題はあったんですが、本当に現実に現場で困っている方がたくさん出てきているという話が出てきている。それは嫡出推定の話であります。
大臣も弁護士の御出身でありますから十分御承知だと思いますけれども、死別などの場合は別といたしまして、離婚に至る大部分のケースでは、まず当然のことながら別居が先行している。別居はしていないとしても、夫婦間の性交渉がないような状態がある程度先行している方が圧倒的多数であると思います。ましてや、離婚の調停とか訴訟などを経て離婚に至るというケースでは、まさに長期間にわたって夫婦間の性交渉がなかったというのは、もう社会通念上は常識であると思います。
ところが、こうしたケースであっても嫡出推定が働いてしまいます。夫婦の間の貞操義務というのが一応あると思いますので、法律上離婚が認められるまでは他の異性との性交渉がないというようなケースであったとしても、特に女性の場合は待婚期間半年というのはあるかもしれないけれども、正式に離婚が認められたということで、離婚直後に懐妊に至るというケースはやはり少なからずあり得るというふうに思います。
ところが、こうしたケースでも嫡出推定が働くので、離婚から三百日以内の出産の場合は前夫の子と推定をされる。しかも、これは嫡出推定と言われていますが、推定なんて生易しいものじゃない。前の夫から嫡出否認の訴えがなされるなど、家庭裁判所を巻き込んで、いわゆる裁判手続を経なければその推定を否定できない。ましてや、離婚をしていますので、前の夫が協力をしてくれない、あるいは協力を求めること自体も、離婚に至っているんですから求めがたいというケースがあるわけですね。
もはや、この嫡出推定、こうしたケースについてまで推定を超えてみなし規定に近いぐらいのやり方をしているのは時代に合っていないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○杉浦国務大臣
先生のおっしゃったような例、別居している、離婚訴訟等で激しく争っている、それで離婚が成立した後に懐妊した場合だと思うんですが、一般的にどれぐらい例があるかわかりませんが、私、弁護士として一、二やったことがありますけれども、例としては特異な例だと思うんですけれども、そういう例の場合に、前の夫の子だと推定することは実態に適合しないと思うんです。
ただ、法律は、この社会の安定を図る。婚姻関係、子供の関係についても、父と子の関係でございましたら、早期確定、早く確定しなきゃいかぬ。それから、親子の争いを防止するという見地から定められている。婚姻の解消の日から三百日以内に出生した子を前の夫の子と推定するというのは、そういう社会の要請から定められていると思うので、一般論としてはそれは合理的なルールだと思うんです。御指摘のような事情のあるケースは特異なケースだと思うんです。その場合には、裁判で争いなさいと、こういうことになると思うんです。
見直しを行うべきだというお考えのようでございますが、したがって、そういう事情でございますので、嫡出推定のあり方を見直すとすれば、慎重の上にも慎重に検討すべきことだと私は思っております。
○枝野委員
私も、嫡出推定という制度自体を完全になくしてしまうといろいろややこしいんだと、婚姻中の子についても一々父親がだれであるのかということを証明しなきゃならないとか、例えば、もう明確に死別などの場合には、婚姻の解消から三百日以内に生まれました、それは亡くなられた前の夫の子ですということの推定を働かすのは一種合理的だと思いますし、推定自体を否定するつもりは全くありません。
ただ、現状の、今おっしゃられた特異なケースかどうかというのは、何を基準に特異というかということだと思いますけれども、つまり、離婚のケースの場合に、離婚の前に別居、少なくとも夫婦間の性交渉がないという期間が相当程度先行していて、そして離婚に至るということの方がむしろ普通であって、離婚の前日に性交渉があるなどというケースの方が私は特異なケースだというふうに思います。そこは認識の違いがあるかもしれませんが、いずれにしても、そういうケースのときに、例えば現行法では、前の別れた夫の協力を事実上得なければ嫡出否認の裁判手続もなかなか進まないんですね。
どうも、現行の裁判所の運用を見てみると、相当厳格にこの嫡出推定を運用しているようで、その離婚に至るための交渉の中で何月何日に会っているから、だからそこで懐妊をした可能性があるだなんてばかなことを言った裁判官がいるらしいんですよね。あるわけないじゃないですか、離婚の交渉をしている途中で。そういう現実を考えたときには、少なくとも、その離婚後三百日というところの間の推定については、推定に対する反証についてもっと要件を緩和する。これは裁判所にゆだねてもなかなか前に進みませんので、立法的な解決を検討する必要が急速にあるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
○杉浦国務大臣
この問題を扱うのは家庭裁判所であって、家庭裁判所は山のようにこういう問題を抱えておられると思うんですけれども、裁判所のとられる態度についてどうこう申し上げることは差し控えた方がいいと思うんですが、私の乏しい経験でこういう例があったんですね。
離婚調停をやる、調停不調で訴訟までいったんですが、その当事者が、私は女性の方を受けたんですが、調停が終わる、訴訟の期日に会うとまた気分が盛り上がって、すっとホテルへ行っちゃう。そういう性交渉を繰り返している例がありまして、私は辞任しました。それは、向こうの方が、いや、その気持ちがあるんだから離婚する意思がないんだ、そもそもないんだと、つまり、性交渉を持つことは意思がないんだ、なのに訴訟を起こすのはけしからぬというようなことを言われたものですから、私は弁護士を辞任したことがございます。それは別居している人たちだったんですが。
要するに、私が言いたかったのは、別居して離婚訴訟で争っていても、ケースによっては性交渉も、私の場合体験しているわけで、なかなかそういう特異な例については判断が難しいわけです。したがって、社会通念に基づく合理的なルール、婚姻解消の日から三百日以内に出生した子は前夫の子と推定するという、こういう推定ルールを変更するというのは、御意見はよくわかります、御指摘の点はわかりますが、慎重の上にも慎重に、検討するとすればしなきゃならない、こう思っておる次第でございます。
○枝野委員
大臣がおっしゃられたようなケースがあることは私も理解しますが、それこそ特異な例だからこそ辞任をされたんじゃないかというふうに思うんですが。
もちろん、軽々に、逆に法律を変えることによって混乱を生じさせてはいけないと思うんですが、社会通念というのは変わるんですよね。
何年前と言ったらいいのかわかりませんけれども、何十年か前には、婚姻届を出してあるいは少なくとも結婚式などを挙げた後に懐妊をするというのが一種の社会通念であったんだろうと思います、よかれあしかれ。ところが、現状では、懐妊という事実が先行して婚姻届を出す、結婚式を挙げるということの方がむしろ一般的になってきているところもあるわけですね。明らかに社会通念というか時代状況は変わってきているという構造をしっかりと認識をしないと、現場の制度のはざまの中で具体的に困る方がいらっしゃるわけです。
しかも、例えば、これは子供の問題ですから、つまり、本当の父親でない父親が戸籍上父親で一度たりとも書かれてしまうということは、将来の子の福祉のことを考えても非常に避けたいケースであるわけでありますから、本来の父親ができるだけ早く認知になるのかな、これをできるようにしてあげるというのは、やはり子の福祉にとっても大変重要なことなわけですから、制度のはざまの部分のところだとは思います、そういう意味ではレアケースかもしれません。しかし、明らかに社会通念は時代によって変わっている。それに対応して、その制度のすき間に落ちることのないようにするのは、政治やあるいは法務省の役割だというふうに思いますので、善処を期待したいと思います。
もう一点、民法ともう一つ刑事関係のところですが、具体的な事件の話はしません。それから、先般来この委員会でも、法務省がというか東京地検の記者会見で、何でそんなに早く記者会見ができたのかというやりとりがありますが、そうした個別の案件をやるつもりはありませんが、一般論として。
新聞に載るような重大刑事事件の場合、逮捕しましたとか起訴しました、こういった場合には、記者会見、記者発表などがなされてそうした事実が報道される、これはわかります。それから、捜査の途中でも、しかるべき担当者が公式に捜査の経緯を公表するということがあるんだろうということはよくわかります。
しかし、新聞、テレビなどの報道を見ておりますと、被疑者の供述内容であるとか捜査機関でなければ把握できないような事実が、いわゆる捜査筋の話としてという形で報道されているんですよね。一個一個全部追いかけているわけじゃありませんが、捜査当局、つまり検察庁や警察などからそうした記者発表などがなされたとも見えない、つまり非公式な情報に基づいて、新聞、テレビなどが、被疑者は自白をしているとか、被疑者は証言を拒否しているとか、こういう新しい証拠が見つかったとか、こういう話が報道されているんですよね。こうしたことは望ましいことなんでしょうか。
○杉浦国務大臣
検察当局の方で捜査情報や捜査方針を外部に漏らすというようなことはあり得ないと考えております。
しかし、おっしゃるような報道が頻繁になされているわけでございまして、適正な捜査や公判の遂行に支障を生ずるような報道がしばしばなされておるわけでございまして、これは望ましいことではない、報道がなされることは望ましいことではないと思っております。
ただ、先生御案内のとおり、特に社会の耳目を引く事件だとそうですが、そうでないことでもそうですけれども、報道各社はさまざまな取材活動を行っております。
私が外務副大臣、官房副長官のとき、それぞれ問題の時期だったものですから、夜討ち朝駆け、ともかくマスコミ対応をどうするかということで神経をすり減らした部分がございました。言ってもいないことを書かれる。その話は杉浦から出たに違いないと疑われる。
あの方々は、質問して黙っていますと、顔色を見て、これはイエスかノーか、勝手に判断をして書く部分もございます。検察官についても恐らくそういうことがあると思うんです、夜討ち朝駆け。記者会見をやっております、それぞれ広報担当がいて、それぞれの庁で定期的にやっておりますが、そういう記者会見の際に質問が出て、それに対する応答ぶりを見ながら勝手に判断して書くということもあり得るんじゃないか、自分自身の体験からそう思うんです。
ですから、それほど報道機関には、私どもが働きかけて動くところじゃありませんので、報道機関自体をどうこうするわけにまいりませんが、少なくともそういう、先生が御指摘のような報道がしばしばあることから迷惑を受ける、適正な捜査に影響を与えかねない、支障を与えかねないということはしばしばございまして、口頭でクラブで注意する、記者会見の際注意する、抗議という言葉は適切じゃないかもしれませんが、こういうことは間々あるようでございます。
私が外務副大臣のときには、記者クラブに、そういうことはございません、注意してくれという紙を何回か張り出しました。検察庁の場合、紙を張り出すというのはかえって捜査に響くから原則としてやっていないようですけれども、この点は、報道各社がそれぞれの使命に基づいて取材をして報道されることの結果が記事になるわけで、だからといって検察当局が捜査情報や捜査方針を外部に漏らすということとは違う問題だと私は思っております。(発言する者あり)
○枝野委員
今ありましたけれども、記者の問題なんでしょうか。確かに私も、言ってもいない、やってもいないことを勝手に報道機関に書かれて大変な迷惑を受けたこともあります。あるいは、記者会見などで話したことが、ちゃんと流れを聞いていていただいた方は趣旨を間違えなかったけれども、いいかげんな聞き方をしていたので趣旨を百八十度違って書かれて迷惑を受けたということもあります。そういった意味では、記者の皆さんの資質、能力というのも問われるべき部分はあるんだろうと思いますが、しかし一方で、もっと大事なことは、捜査機関の側から、公式な発表以外に、幾ら夜討ち朝駆けでつきまとわれたとしても、何かほのめかしたり漏らしたりしていいのかどうかという側の話です。
捜査機関側が話していない、漏らしていない、記者発表以外のところで一切やっていないということであるならば、例えば、そういった旨の報道がなされたら、全部、これは抗議は当然だと思いますが、報道機関に対して国として損害賠償請求訴訟すら僕はできるんじゃないかなと、もし本当にしゃべっていないならですよ。ところが、そうしたケースは聞かないんですよね。
新聞にリークをされたという言われ方をしますが、リークをされた捜査情報の中でも、捜査機関が抗議をして出入り禁止にしたりしているケースは非常に恣意的なんですよね、全部にやっているわけじゃない。どうもこれは捜査機関も黙認のうちに出したので抗議もしてないから出入り禁止にもしていないのかな、こっちはそうじゃなくて勝手にやったから、これは書くなと言ったのに書いたから抗議して出入り禁止にしているのかなというような、めり張り、仕分けをしているとしか思えないような対応だと思うんですね。
もし本当に捜査機関がいわゆるリーク等をしていないというのであるならば、それを前提とした厳しい対応を報道機関に対して横並びで一律に求めるべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○杉浦国務大臣
検察官にも守秘義務がございます。もし漏らしているとすれば守秘義務違反でございますので、刑事罰の対象にもなるということは御承知のとおりであります。
そういうことはないと私どもは思っておりますが、一般論として申し上げますと、検察当局は捜査をしております。時間を限られた範囲内で捜査をしておるわけでございますので、適正な捜査の遂行に支障を生ずるような報道がなされた場合には、もちろん報道の自由にも配慮しながら、事案に応じて適切な対応をしておるものと承知しております。記者会見で口頭で注意したり、抗議したり、さまざまな適切な対応をしていると承知しております。
また、これを訴えたらどうかというようなお話がございましたが、あくまで一般論として申し上げますと、御指摘のような記事は数多く出るわけでございまして、もう一々対応する余裕はない、片一方は捜査をやっておりますから、そういうこともございます。内容が著しく捜査の妨害となり、あるいは将来の公判に影響するというような場合には、場合によっては当該報道機関に遺憾の意を伝えるなどして適切に対応しているというふうに承知いたしております。
○枝野委員
大臣、起訴状一本主義というのは当然御存じですよね。刑事裁判を起こすときには、裁判官に予断を与えてはいけないということで、まずは起訴状以外の情報を提示しないというところで公判がスタートするわけです。検察官と弁護人が両方そろって初めてさまざまな具体的な主張が検察官の主張として提示をされるので、それまでは裁判所には起訴状以外の情報を与えないということなんです。これは非常に合理的なことだと思います。
ところが、プロの裁判官は報道は報道だという区別ができると思いますが、まもなく裁判員制度というのを導入するわけですよ。プロの裁判官は確かに報道と起訴状一本主義と、使い分けといいますか、しっかりと分けた事実認定ができるだろうと思います、そのトレーニングをしているわけですから。ところが、一般の国民の皆さん、裁判員になっていただくというのに、この起訴状一本主義とかその理念を全部しっかり教え込んで、報道で聞いたことは全部頭から忘れてください、さあ裁判ですよなんて、現実に機能するはずないじゃないですか。
したがって、捜査の支障とかという問題じゃないんです。捜査機関として、起訴状一本主義という観点から、将来の裁判員候補者に対して、予備軍に対して予断を与えない範囲の中で、なおかつ公益の観点から、必要な情報だけをしっかりと管理、コントロールして、少なくとも、捜査機関からの公表、捜査機関筋によればという公表、もちろん、メディアが独自の足で稼いで、その捜査官の人たちを尾行して回っていたらああいうところへ行っていた、こういうところへ行っていた、独自に調査報道してそれが出てしまう、これは報道機関として当然の権利だし、やむを得ないことで、逆にそういうことで、捜査機関の意に反する報道がある、そんなことは抗議しちゃいけないことなんですが、捜査機関から、捜査機関筋だなんていう報道がなされたら、それはこの起訴状一本主義の観点から絶対に許されないことなんだという思いで、しっかりと対応していただかなければいけないと思いますが、その決意を最後にお聞かせください。
○杉浦国務大臣
先生のおっしゃるとおり、検察当局は従来から、関係者の名誉やプライバシーへの影響、捜査、公判への影響の有無、程度などのほか、裁判所へ予断を与えるおそれの有無、起訴状一本主義のもとにおいて、そういった問題についても留意しながら、公判請求の時点そのほかで適正に報道発表を行ってきたものと承知しております。起訴状記載の事実を超えて検察当局が報道発表を行ったことはないと承知しております。
裁判員制度のもとでも同様に、御指摘のように裁判員に予断を与えるおそれの有無といった問題を考慮しなきゃならない。特に裁判員の方は法律家ではございません、素人の方ですから、特にそういった点を考慮しながら適正に対処していかなければならないと考えております。
○枝野委員
まず大臣に申し上げたいのは、一つは、今、検察の話しかおっしゃっておりませんが、もちろん法務省が所管をしているのは検察だけですけれども、起訴状一本主義ということの観点からすれば、起訴権限を持っている検察庁、そこが捜査の監督をするんですから、そこを通じて警察当局も含めて今のようにやっていただかないといけないということをまずきちっと申し上げておきたい。
それから、今大臣が、きちっとした判断に基づいた公表、発表以外はしていないということをおっしゃられましたので、今後、例えば、捜査機関筋によればとか、捜査機関が非公式に漏らしたのでなければとてもこういう報道はできないなという報道があったら、この委員会の場において、具体的にどうしてこういう記事が出てきたのか、そして、そういう記事が出たことについて、本当に漏らしていないんだったらどういう対応をするのかということについて個別に今後聞いていかせていただきますので、そのことを申し上げて質問を終わります。
ありがとうございます。
<他の議員の発言部分省略>