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衆議院-法務委員会


平成18年03月14日

[執行猶予者保護観察法の一部改正について]


○枝野委員

 執行猶予者保護観察法の一部改正、私どもみんなで起草をした法案でございますので、その法案は十分ではないとしても一歩前進だというふうに思っておりますので、その背景、あるいは今後何が必要かという、ちょっとそもそも論を大臣とさせていただければと思います。

 まず、そもそも執行猶予あるいは保護観察つき執行猶予という制度そのものの話を大臣とさせていただきたいと思うんですが、実は、これは揚げ足取りでなく、ちょっと問題の出発点、私もあれっと思ったんですが、更生保護のあり方を考える有識者会議の中間報告の中に「そのため、更生意欲の乏しい者等に対しては、無力な場合も認められる。」という文言があって、あれっと思ったんですね。

 あれっと思った上で、私も弁護士の経験がございますので、半分そうだなと思ったんですが、多分、一般の方からすれば、あれっと気がついたら、本当にあれっではないかと思うんです。つまり、保護観察つき執行猶予者の中に、更生意欲の乏しい人がそもそもいるということが前提になっているわけですね。多分、多くの国民の皆さんは、罪を犯したけれども刑務所に入らずに、しかも保護観察つき執行猶予となったということは、保護観察に付されれば、その中の処遇によってこの人は更生をする可能性が高い、だから刑務所に行かないで執行猶予なんだ、こう受けとめられるのが多分普通だというふうに思うんですね。

 更生の意欲があっても、いろいろな事情で、例えば盗み癖が抜けないとか、それこそ先ほどの性犯罪などはいろいろな背景があって、本人の意欲があってもなかなか更生できないというケースはあるかもしれません。しかし、そもそも更生の意欲がない人が更生するというのは考えられないわけで、そうすると、執行猶予の人の中には、罪を犯してなおかつ更生の意欲もないのに刑務所に入らない人もいるんだということが、これは前提になってしまっているわけですね。

 実際の裁判の実務としては非常によくわかります。まさに執行猶予なのか実刑なのかというのは、本人の更生意欲ということよりも、まさに犯した罪の質、あるいは被害者の被害感情、あるいは周辺の皆さんを含めたさまざまな事情、そういったことで執行猶予か実刑かに分かれるという実務は非常によくわかっているんですが、よく考えたら、執行猶予はそもそも何なんだろうという疑問を持ってしまいました。

 大臣、いかがお考えでしょうか。

○杉浦国務大臣

 確かに、法律の世界にいる者と一般の国民の皆さんとは感覚が違うかもしれませんね。

 司法研修所にいるときに、検察修習というのがありましたよね、検察官のところで。そのとき私が当たった検察官が、初犯の者は不起訴、起訴しないという強固な原則の持ち主でいらっしゃいまして、かなり重くて、初犯でもこれはひどいじゃないか、公判請求すべきじゃないかと。一日に何十件と調べますからね。それでも、初犯は不起訴だといって、物すごく説諭するんですね。こんな悪いことして、おまえはもう刑務所に入って何と思っているんだといって、物すごい勢いで説諭するんですが、そういう人に限って不起訴なんですよ。起訴する人は静かに調べまして、静かに調べて言い分を聞いて、だまって起訴と。ともかく初犯は不起訴。もっとも、人間、間違いもあるし、一回は許してやるという温かい心の持ち主で、感嘆した検事さんがいらっしゃいました。執行猶予、まあ、一度目はだめだけれども、じゃ、二度目来たら今度は罰金やるぞ、罰金、三度目は公判請求、執行猶予とだんだん進んでいくんですけれども。

 刑事事件を弁護した一人の弁護士として見ますと、まず一つの境目は公判請求ですね。公判請求に行く前と行く後。初犯不起訴主義という検察官の方もおられましたが、その段階で更生して、反省して、犯罪に走るのをとどまってほしいという願望も入っているんじゃないかと思うんですが、一たん公判請求になったら、これはよほどでない限り、初めての場合は執行猶予がつく。例えば、殺人だとか重い罪の場合は、それは最初の公判請求でも実刑になる場合がありますが、弁護士は一生懸命に情状を立証しますので、執行猶予がつく例が多いんじゃないでしょうか。一般の方から見ると、何であんなひどいことをしたのに執行猶予をつけるんだ、こういう事件でも割合執行猶予がつくことが多いんじゃないかと思うんです。

 先ほど、先生聞いていただいたかどうかわかりませんが、安城で女の子たちを殺したあの人については、私は地元だからある程度わかるんですけれども、豊橋の更生保護法人にいて、いなくなったんですけれども、気の毒な生い立ちをした、しかも、更生保護法人の人たちも反省していましたけれども、一生懸命仕事を探したけれども見つからなかった、本人の意欲があるかどうかもはっきりしなかったけれどもという反省をしておりましたが、そういう関係者の努力もあったにもかかわらず、職を見つけられなくて出奔した。出奔した理由はもう本人に聞いてみる以外にないわけですけれども。やったことはひどいことなんですけれども、許すべからざることをやったんですけれども、片や、話を聞いてみると、ああ、気の毒だなという気持ちがしないでもないわけですね。

 ただ、保護観察つき執行猶予になる、これは最後ですね。本当に、本来実刑でもいいものを、特に更生で、裁判官が説諭しますから。あなた、この間に、もう二度と、悪いことやったらもう執行猶予ありませんよと裁判官が説諭いたします。絶対に軽い犯罪でも執行猶予はありませんと。この五年の執行猶予期間、四年、三年の執行猶予期間中に犯罪を犯したら、もう二度と、その犯罪については実刑です、しかもこの保護観察つき執行猶予も取り消されますよと裁判官はきちっと説諭するんです。その上で、保護観察つき執行猶予を言い渡すわけですので、裁判官の心証としてみれば、実刑にするか保護観察にするか迷った上で、恐らくケースに応じてつけていらっしゃるんじゃないかというふうに私は思っております。

 ですから、先生のおっしゃったことはそのとおりなんですけれども、ある意味では、今度議員立法で、これは保護観察つき執行猶予者ですね。仮出獄、仮退院、これは何号観察でしたかね。何号観察か決まっているんです。保護観察つき執行猶予者、四号観察というんですが、四号観察とその一、二、三号とは、要するに特別遵守事項を決められない。だから、保護司の方がついて、もちろん保護観察官と一緒に面倒を見るわけですが、これを守りなさい。例えば、保護司さんのところへいらっしゃいよ、観察所へ出頭しなさいとか、こういうプログラムをやるときに受講しなさいとか、そういう遵守事項を定めてあればそれに従わなきゃいけないわけですが、多分、保護司さんのところへ出頭するのも義務じゃない、遵守事項じゃない。

 こういうことでございまして、ある意味では今まで抜けていた部分じゃないかと思うんです。幸い、今度議員立法でその抜けたところを穴を埋めていただきましたので、これからは四号観察も、では、保護司のうちへ月一回いらっしゃいよとか、観察所へ月一回は出頭しなさいとか、そういう遵守事項を決めて守らせる。守らなければ取り消しですから、保護観察つき執行猶予。そういうペナルティーがあるよということを前提として守っていただけるようにこれでやっとなったわけですが、今まで何で気がつかなかったかと思うぐらいのところに穴があいておったというふうに私は理解しておるのです。

 先生方の御尽力に心から敬意を表し、感謝申し上げる次第でございます。

○枝野委員

 もうちょっとコンパクトに御答弁いただけるとと思いますが、おっしゃったことの中で、確かに何でもかんでも刑務所にほうり込めばいいという話じゃない。御指摘になった検事さんのような物の考え方というのはやはり基本だろうと私も思います。

 ただ、本当に揚げ足をとる意味じゃなくて、ここに書いてある、更生の意欲もないのに執行猶予判決を受けているという人が現実に存在するというのもこれまた事実なんだろうと思います。これはやはり制度として許容されないはずのものではないのか。更生の意欲があっても更生できないという人が一部出てくるということ、これはやむを得ないかもしれないけれども、そもそも更生の意欲もない人はやはり実刑にするべきではないのか。

 これは法律をどう変えるのか。例えば、執行猶予の要件にそういったことを入れるのかとか考え始めて、まじめにちゃんと組み立てようと思うと結構大変な議論だろうとは思います。そもそもの刑罰とは何かという本質論のところから大議論になって、軽々に結論を出していい話だとは思いません。多分、それこそ、私は余り審議会は好きではありませんが、法制審議会のところで専門家に相当な議論をしていただかないといけないような話だと思いますが、やはり今の現状は、少なくとも更生の意欲すらない人は実刑にするという原則を少し議論してみた方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょう。

○杉浦国務大臣

 大いに議論していいことだと思います。また、裁判員制度も導入されますので、最終的には裁判所が決めるんですね、その部分も。どのような表現を用いようと、裁判所の心証で執行猶予を付すべきか、保護観察をつけるべきか、実刑にすべきかは判断されるところですから、裁判員制度が採用されて一般の方が一緒に裁判することになれば、そういう国民の素朴な議論や感情も交わされるようになるんじゃないかと思います。

○枝野委員

 確かに最終的には裁判所の裁量の範囲だとは思うんですが、少なくとも現状では、総合判断ということの中で、特に実刑と執行猶予を分ける判断材料のところに、更生への意欲ということは少なくとも明示はされていません。

 そうすると、やはり裁判官の心理に立てば、これぐらいの罪だったら実刑で、これぐらいの罪なら執行猶予だからとか、いわゆる相場というものは、大臣も弁護士御出身でいらっしゃいますので、私よりも経験長くて御存じのとおり、どうしてもそういうところに流されがちになるんではないかと思いますので、私は、もし解決をする必要があるとすれば立法的措置が必要かな、こんなふうに思っております。

 結論として、私自身がそれが今いいという結論を出しているわけではないことは申し添えたいと思いますが、少し、法制審含めて、御議論、御検討をいただいたらいいんじゃないか。そうでありませんと、なかなか、特に今は世の中全体に、日本の刑罰は甘いんじゃないかという、半分正しくて半分誤解だと私は思うんですけれども、そういう世論があります。それに真摯にこたえていかないといけない。甘いんじゃないかと思われる最大の部分は、一度処罰を受けた、あるいは執行猶予判決を受けた人が再犯を犯しているという部分がやはり一番だというふうに思いますので、少し御検討をいただければと思います。

 さて、次に、保護司のことについてお話をしたいと思います。

 いかに今回の法整備をしても、保護司さんが保護観察中の者に対するまさに保護を十分にしていただかないと、実効性はその分小さくなるということでございます。既に出ているかと思いますが、念のため改めてお尋ねしますが、保護司さんの定数が五万二千五百人ですか、十七年一月一日現在の実数が四万八千九百十七、誤差の範囲ではなく、定数を満たしていない。なかなか保護司さんのなり手がいないというふうに聞いておりますが、こうした実態についての大臣の認識をお聞かせください。 ○杉浦国務大臣

 先生の今おっしゃった数字のとおりでございまして、充足率九二・七%で、少し問題だと思っております。改善しなきゃならないと思っております。更生保護に関する有識者会議でも議論されておりまして、保護局の方でもさまざま検討しておるところでございます。

 保護司の方の後任、やめられる場合に後任を補充するのに、今までは縁故といいますか、後任にこの方を推薦するというような形で選ばれるケースが多かったようなんです。ここ数年、やはり地方自治体とかいろいろな団体と御相談しながら保護司になっていただくところも出てきておるようですが、まだまだ少ないようでございます。

 そういうことでございますので、もともとの成り立ちが地縁関係で始まっておるものですから、例えば私の町ですと、新しい新興住宅地にはぽこっと保護司さんが抜けちゃうんですね、新しい町なんですが。大体、小学校区で二、三人、人数の多いところは五人ぐらい保護司さんがいらっしゃいますかね。ですけれども、新興住宅地になるとぽこっと保護司さんがいらっしゃらない。つまり、古くからのといいますか、昔の保護司さんがその次の保護司さんというふうに引き継がれてきていますから、どうしてもそうなる。

 ですから、有識者会議の議論も踏まえて検討したいと思っていますが、所によっては公募制、公募してみたらどうかとか、もう少し地方自治体とか諸団体との連携と申しますか御相談して、御推薦願えないかというようなことを進めるとか、そういうことをやったらどうかと、いろいろなことを検討いたしております。

○枝野委員

 私、これまでの保護司制度の歴史というのは、保護司の皆様方がまさに手弁当、無償で努力をしていただいて、そのことが日本の保護更生に当たって大変大きな役割を果たしてきたと高く評価をし、また敬意を表するものであります。また、この制度そのものは、私はこれからも重要な保護更生の手段といいますか糸口として保護司さんという制度を守り、それを維持させていく必要があると思います。

 ただ一方で、今大臣からも御指摘ありましたとおり、従来日本社会にあった地縁というものが崩れている地域がたくさんあるというのも、これは紛れもない事実であります。恐らく、三十年、四十年ぐらいまでの日本であればかなりの部分で、お互い地域の中で顔見知りであって、どこの家族構成がどうなっていて、保護司さんの年齢ですとどこの家のおじいちゃんはと言っていいんでしょうか、人望のある人でというのがお互いみんなよくわかっていた社会であったと思いますが、もはや、今はそれがわかる、そういったコミュニティーが成り立つ社会自体の方がむしろ圧倒的少数ではないかと思います。そして、残念ながら、ますますそういった地域が減っていくということの予想が立っているのが現実だろうと思うんです。

 そして、新たにニュータウン的な形でできた地域の中では、お互いに、あの人が保護司さんをやるならば、あるいはあの信頼できる保護司さんから面倒見てくれよと頼まれたならこれは間違いないやなどという、お互いの人間関係自体が時間がたってもなかなか形成をされない地域というのが日本の中にどんどんどんどんふえていっている。しかも、住宅事情の変化その他のことを考えますと、出向いていったり保護司さんの家に来ていただいたりということもなかなか困難になっている。

 そういうようなことを考えますと、まず、そもそもそうした中で、御本人も意欲を持ち、周囲の皆さんもこの人にやっていただけるのならという将来の保護司さんを見つけていくこと自体が、もちろん公募その他ということをやるのは当然で、やらなければますます足りなくなるとは思うんですが、そうした状況の中で、本当にこれから保護司さんのなり手を、従来の定員五万人を超えるような規模を維持していけるのかというと、私は大変疑問だと思うんですけれども、いかがでしょう。

○杉浦国務大臣

 やり方によってはあると思うんです。保護司の仕事に情熱を感じ、使命感を持ってやってくださる方は、私の体験では周りにいらっしゃらないことはないと思います。地縁、血縁の社会でしたから、しかも無償ですので、変な人に渡すというかお願いしても御迷惑をかけるからというような点もあったと思うんです。ですから、募集方法をもっとオープンに、透明性を持ったものにしていく。立候補してもらって、我と思わん人に手を挙げてもらうという方向を模索していく必要が一方ではあると思います。

 それからもう一つは、やはり実費弁償の額が少な過ぎるということがあると思うんですね。後の質問で出てまいりますが、例えば場所ですね。会う場所にしても、例えば喫茶店に行けばコーヒーを飲むわけです。ファストフードレストランへ行っても、食事を買ってお金を払うわけですね。自宅で受けている方が多うございます。自宅に来られても、お茶を出したり食事をしたりするわけで、実費が要ると思うんですね。それがもう少な過ぎる。年額八万円じゃどうにもならないと思うんです。

 そういう社会的名士であって、地域の信望の厚い方ですから、お金のことはなかなか口に出されない。僕なんかに向かっては率直におっしゃるんですけれども、めちゃくちゃだとおっしゃるんですが、保護司会の席上とかあるいは保護局に向かってそういうことはおっしゃらないわけでして、私は法務大臣就任早々、ぜひこれはふやすべきであると、谷垣大臣ともかけ合って、とりあえず御理解をいただいて三割ふやしていただいたんですけれども、来年度は倍額要求しようと思います。これでふえたところで年額九万円、十万円足らずです。

 私ども、岡崎市のことが一番私は詳しいんですが、町内会が五百ありまして、町内会長、総代と言っていますが、五百人いらっしゃいますが、市からもらっている実費弁償は月額、小さな町でも二万ぐらいもらっていますよ。報酬じゃありませんよ。だから、それはお金の面でいったら、保護司さんはこんなに低い。総代は何だかんだとなり手があっても、保護司というと、お金の面もあるしという人も中にはいらっしゃるわけで、まずそういう実費弁償の面でもっときちっとしていくということも大事なことじゃないかというふうに思っています。

○枝野委員

 私も、今の実費弁償の水準というのは本当に、ボランティア以上に、保護司の皆さんには自腹を切ってということを強いているということでありますので、大臣、頑張って来年度の予算でこれを増額するということをやっていただきたい。全く賛成であります。

 ただ、私は恐らく、保護司さんの仕事の性格からすると、もちろん今やっていらっしゃる方は大変苦しく、自腹を切ってやっているということを解決することは大事ですけれども、では、お金をある程度もらえればやってくれるという人が出てくる、あるいは適切な人が見つかるという性質のものでもないんだろうというふうに思っています。

 一つは、今喫茶店とかそういう話がありましたけれども、私は、自宅に呼んでということがなかなかやりにくい社会、住宅環境になっているということであるとすれば、法務省が一番いいわけですけれども、法務省の施設がそんなにたくさんあるわけではありません。それこそ、自治体その他の公的機関の施設などを、保護司さんが保護観察中の人とお会いになるための面会の場としてもっともっと使わせてもらうということ、これはもう法務省挙げて、総務省などを通じて自治体その他に強く求めるべきだと思いますが、いかがでしょう。

○杉浦国務大臣

 それも検討すべきことだとは思います。

 日本司法支援センターというのが立ち上がりますね。差し当たっては都道府県に一カ所ですけれども、ネットを張ろうと、何年後には。あそこも、司法支援ですから、場所を、ロビーぐらいで会っていいとか。法務省の中だって、法務局も大分統廃合で減ってきたんですが、法務局の会議室を使ってもいいし、地方自治体にも御相談をする、そういう場所の確保、その場所を確保する場合に費用が要る場合には、費用を実費弁償として持つ、そういう点を多角的に検討していく必要があるというふうに私も思っております。

○枝野委員

 これは多分、地方公共団体にとっても切実な問題だというふうに思っていますので、法務省がきちっとイニシアチブをとれば一定の協力は得られるのではないかと思っておりますので、リーダーシップをお願いしたいと思います。

 それで、現状やっていただいている保護司さん、それから将来意欲を持ってやっていただけるという方を何とか数を確保する努力をしても、私は、先ほど言った、地縁が崩れているということを考えると、まさに保護司さんの仕事が十分に機能するためには、一定の地縁というもの、地域コミュニティーというものが機能しているからこそ保護司さんの仕事がしやすい。そもそも、地域全体がお隣さんがだれだかわからないよという人同士で暮らしている地域の中に、たまたま意欲のある、能力もあるという人がいて保護司さんを引き受けていただいても、やはりその地域はそもそもの地域コミュニティーがないんですから、その地域の中で篤志家の方がリーダーシップを発揮して仕事を見つけてあげてとか、日ごろの生活を指導してあげてということ自体の前提を欠くんだと私は思うんですね。

 したがって、私は、保護司さんは、そういったいい意味での日本の地域コミュニティーが残っている部分、あるいは、そうした部分の残っているところを活用して保護更生に生かせる部分を担っていただく役割としてはこれからも大変大きな意義を持つと思いますが、そもそも保護司さんが仕事をできないというと言い過ぎかもしれませんが、非常にしにくい地域というのが日本の中にどんどんふえている。

 そしてまた、犯罪の種類あるいは犯罪の動機、これも実は統計的に見ると、新聞、テレビをにぎわす、目立つ事件が非常に極端だからということはあるかもしれませんけれども、やはり三十年前、四十年前の犯罪の動機であるとか犯罪の形態とは大分違った側面がある。先ほど来出ている性犯罪でありますとかあるいは覚せい剤犯罪とか、従来、例えば貧しさに負けて泥棒をしてしまったとかという典型的な話とかとは大分種類も違っていて、ボランティアの保護司さんが心と心の触れ合いで立ち直らせることがそもそも困難な犯罪事案も少なくない、ふえてきている。

 そういうことを考えると、保護司さんにそもそも全面的に依存をしてしまっている従来の制度、そのこと自体を見直さなければいけないんじゃないか。保護司さんにも大きな役割として一定の役割は担っていただかなきゃいけないけれども、保護司さんに担わせてはちょっと酷だ、無理だという分野であるとか地域であるとか、そういった分野は間違いなくふえていると私は思うんですか、いかがでしょうか。

○杉浦国務大臣

 そうですね。日本全体としてはふえておりますが、ただ、高齢化社会というか長寿社会になってまいりまして、私どもの地元では、大きな団地でも結局高齢化が進んでくる。そうすると、中でつき合うようになって、なかなか立派な活動をしている町内会、団地なんかでも結構あるんですね。

 ですから、社会の変化に対応した形で奉仕活動のあり方を考えていくということ、先生が御指摘のとおり大事なわけですけれども、例えば、弁護士会が司法過疎地域にひまわり事務所というものを設けて、弁護士を送り込んでいるということもやっているんですね。だから、保護司過疎地域が今ここにあるとすれば、そこへ担当保護司さんを決めて送り込むと言うと語弊がありますが、担当していただくというような方法も対応方法としてあり得るんじゃないだろうか。いろいろ工夫をすれば何とか、保護司の活動に対する情熱のある方はいらっしゃらないわけじゃないから、ちょっと楽観的過ぎるかもしれませんが、いろいろと努力する余地はあるんじゃないか、こう思っております。

○枝野委員

 大臣、残念ながら、今のところは私はちょっと見解が違います。

 保護司さんという制度は本当にいい制度で、ただ、それがいい制度であるというのは、地縁を軸とした人間関係が濃密、濃厚であって、その人間関係や地縁というものを生かして保護司さんと被保護者との間の人間対人間、心と心の触れ合い、あるいは、保護司さんの持っている地域におけるさまざまなネットワークというものを生かすことによって、実は官ではできない、公務員ではありますが、いわゆる民間のボランタリーな保護司さんの方がむしろ犯罪を犯した人を立ち直らせるに適切であった、なおかつ、そういった意欲を持ってやってくださる方もたくさんいたということが、私は保護司制度を支えてきたベースなんだというふうに思っています。

 実は、本来は、犯罪者を立ち直らせて再犯を起こさせないという仕事は、まさに官の役割、役所の役割であるはずなんですね。だけれども、そういう日本にいい文化といいますか伝統があったんだから、しかも意欲を持ってやってくださる方がいるんだから、何も官が全部抱えないで、その保護司の方々の力を生かさせていただこうということが私は保護司制度のベースだと思います。

 したがって、保護司さんのいない地域にほかの地域の保護司さんに行ってもらえば、それは数のバランスはとれるかもしれません。しかし、そもそも保護司制度というものの持っている意義からすれば、邪道とまでは言いませんけれども、ちょっと違うんじゃないのか。むしろなかなか保護司さんが出てきてくれない、あるいは適切な人が出てきてくれないというような地域においては、まさにその地域コミュニティーとかさまざまな問題で保護司制度のベースになるべき社会背景が失われているんだとしたら、本来の役割である官が、つまり、私は、むしろ保護観察官の方の数をしっかりとふやして、しっかりと責任を持ってその人たちの保護、矯正、再生というものを担うということにもっともっと予算も人も使うべきではないか、そんなふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○杉浦国務大臣

 保護観察官の数も足りないし、質ももっともっと向上させなきゃいけないという点は、先生と同感です。

 もちろん、保護観察官と保護司が協力してやっているわけですから、どうしても保護司の手の届かない部分があるとすれば、監察官が出て直接やるということも大事なことだと思います。そのためにも、ちょっと現状では数が足らなさ過ぎるというふうに思っていますので、今年度、保護観察官、二十八人純増でございましたので、こういう状況の中でよく認めてもらえたと思いますが、今後とも増員をし、充実してやっていこうと思いますので、ひとつ御支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

○枝野委員

 ぜひ頑張っていただかなければいけないと思うんですが、大臣は、次の二つの価値、どちらが大事だと思いますか。犯罪に遭わないという社会に暮らすという価値と、道路や鉄道が便利であるという価値、大臣、どっちが政治の役割として大事だと思いますか。

○杉浦国務大臣

 私は古い人間なものですから、私の小さいころは鉄道もろくにありませんし、道路もありませんでした。社会の心は豊かでした。これだけ立派なインフラが整った社会、豊かな社会、これはこれで結構なことだと思うんですけれども、昔の私どもの小さかったころよりも日本がよくなっているとは思っておりません。

○枝野委員

 まさにその部分のところをしっかりと政府全体の認識にしていただきたいんです。つまり、政府の一番の役割は、国民の生命財産を守る、つまり犯罪を起こさせない、犯罪に対してはしっかりとしたペナルティーを科す、これが政府の一番の出発点の責任なんであって、その金が足りないんだったら、道路をつくる金や鉄道をつくる金を減らしてもこっちに回すのが本来の政治だと私は思いますが、大臣、どうですか。

○杉浦国務大臣

 道路やそっちを削ってと言われると、怒る方がいっぱいいらっしゃいますから。

 それもそうですし、しかし、先生おっしゃるとおり、国家の目的、国民の生命財産を守る、これは基本でございますから、政府としても、安心、安全な国づくり、総理から言われたときも、かつての日本は世界一安心、安全な国だったという神話を取り戻してくれ、その先頭に立って頑張れと激励されて就任したわけでございますので、そこはきちっと踏まえて私なりに、もちろん法務省職員五万一千人いますが、みんなと力を合わせて、予算もいただくようにし、予算と同時に我々にできることはやってまいりたい、こう思っておる次第でございます。

○枝野委員

 私は不満です。まさに、削るというと怒る人がいるしというのは、そのとおりなんです。しかし、まさに右肩上がりの高度経済成長で税収がどんどんふえていくという時代だったら、みんなにいい顔をして世の中は回っていきます。しかし、税収が基本的にはそんなに伸びないどころか下がっているという社会においては、何かをふやそうと思ったら、何かを削るか増税するか、これしかないんです。したがって、それをパッケージで言わない政策は無責任なんです。

 したがって、保護観察の人が足りないんだ、このことによって再犯を防止するという役割が十全に果たしにくいという状況で、保護観察官をふやさなきゃならないんだということであるならば、その分どこを削るのか、それとも増税するのか、そのことを言って初めて私は政治だと思うんです。

 私は、道路をつくる金や鉄道をつくる金を削ってでも保護観察官をふやすべきだと思います。あるいは、公務員の数全体も減らすべきだと思っていますが、公務員の数全体を減らす中では、時代おくれになった役割の部分のところの公務員の定数を大量に削って、その分保護観察官を、年齢にもよるかもしれませんが、何年その方々をトレーニングしたら保護観察所に回せるかというのはなかなか難しいところがあるかもしれませんが、しかしまさに、ほかの、あの役所削れ、この役所は多過ぎるだろうということを言って初めて私は法務大臣の責任が果たせるんだと思っています。ぜひそういった姿勢でやっていただきたいとお願いを申し上げますが、いかがでしょうか。

○杉浦国務大臣

 政府全体として見ますと、治安関係は最優先で人員をふやしております。今年度の予算で、公務員はちょっぴり、少し全体で減りました、今まで公務員の純減はありませんでした。しかし、その中でも、例えば警察官はこの三年で一万人ふやしておりますし、法務省も、刑務官を中心にして、検事も、あるいは裁判官も、あるいは公安庁も、入管も、保護観察官も、ずっと政府全体としてはふやす方向で実際やってまいっております。減らすところはどんどん減らしておりまして、そういう重点に従った公務員政策というのをとってまいっておると思います。

 先生からすると足らないということでございましょうが、ひとつ、それだけ御理解いただけると大変ありがとうございまして、今後とも声援していただければ大変ありがたいと思っております。

○枝野委員

 まず、では、このペースでいいと大臣が思っていらっしゃるのかどうかということなんですね。恐らく思っていらっしゃらないんだろうと思うんですよ、まだまだ足りないということを先ほど来おっしゃっているので。

 したがって、だとしたら、大臣として、まだまだ足りないんだ、もっと速いペースでふやしたいんだと。もちろん、ふやすのに、単年度で一気にふやせるかというのは、人をふやすわけですから、適性のある人をどれぐらい一気にとれるのかとかいろいろありますから、そういう意味で段階が要るんですとかという説明はわかりますけれども、予算というような観点からすれば、それはもっともっと、むしろ、これは今までの日本の政治の悪いところですが、日本の大臣はまず国務大臣です、法務大臣である前に国務大臣なんですから、国務大臣としては、他の省庁の予算についても、あそこは多過ぎると思う、あそこは余っている、あそこは無駄だとか、優先順位が低いということを言う大臣が、私の知る限りではほとんど今まで聞かない。

 これをやっていかないと、みんな各役所が、うちの予算をふやしてくださいと。ふやしてくださいと言う以上は、どこの予算を、何省の予算を削って私のところをふやしてくださいというのをお互いに言い合うようになって初めて建設的な議論になる。財源のことを言わずにただうちの予算だけふやせというのは、私は無責任な政治のあり方だと思っていますので、指摘をしておきたいと思います。

 この話も大事なんですが、さらに、時間がありますので先に行きたいと思いますが、先ほど河村議員の質問の中で、プログラム処遇の話が出ておりました。あえて言えば、今までこうしたプログラム処遇をしっかりと論理的に、あるいは学問的に整理をして十分になされてこなかったことが大変問題であるというふうに思いますので、おくればせながらそれに着手をしたということは一定の評価をしたいと思います。

 今のところ具体的に出てきているのは、性犯罪に対するプログラム処遇でありますが、恐らく、同じようなことは、例えば薬物依存の犯罪、あるいは、これは多分諸外国の例というのを参考にはできない、日本の中でつくらなきゃいけないと思いますが、暴力団。暴力団からどうやったら出所後に足を洗えるのか、そういったことについてというのは、逆に日本の関係部局のところにさまざまなノウハウがあるんだと思うんですね。

 こういうことをきちっとプログラム化して、人と人の触れ合いの中で更生させる、これも大事なこと。だけれども、それが通用しない世界もたくさんある。だとしたら、保護観察官の方も頑張っていらっしゃるとは思いますけれども、抱えている案件も非常に多い。それは刑務所の中もそうでしょう。そうした中では、やはりプログラムとしてしっかりと対応していくという意味では、こうした他の分野にもどんどん、しかも急いで拡大をさせなければいけないと思うんですが、いかがでしょうか。

○杉浦国務大臣

 先生のおっしゃるとおりだと私は思っております。

 去年成立させていただいた監獄法大改正によりまして、そういう処遇プログラムを受講するのを義務づけられるようになりました。ただ、体制が整っておりませんから、順次展開していくことになりますが、まず性犯罪から始めるということでございます。

 もちろん、麻薬、覚せい剤の問題も、カウンセリングとか、刑務所に行かれたら、もうそういうことを教えているんです。これも義務化はされておりません。やくざの子たちに至っては、何とか暴力団から抜け出せるように懇切丁寧に指導して、出すように皆さん努力しておられるわけで、そういう義務化されていないけれども、何とか立ち直らせなきゃいけないということで皆さん努力してきたことでございます。

 新監獄法の制定、五月か、まだはっきり聞いておりませんが、近々施行することになりますので、それを機に、先生のおっしゃった二分野、そのほかにもないかどうか、今後いろいろと検討していく必要があると思います。

○枝野委員

 実はこれは通告していなかったので、答えられなければいいんですが、先ほど河村さんのやりとりを見ていまして、ああと思ったんですが、保護局長と矯正局長ですか、それぞれに御答弁になっておられたんですよね。

 犯罪を犯してしまった人を立ち直らせるという意味では、まさに刑務所の中、矯正局の役割と、それから保護観察、出てきた後の保護更生のあり方というのは、ある意味では一連のものであって、もちろん、一部分、同じように性犯罪に対するプログラムはうまいこと連動しているようだなということは答弁で感じられたんですが、まさにトータルとしての行刑のあり方というもの、そしてその中での矯正のプログラムというものを考えていかなければいけない。残念ながら、日本は全体として、このことの研究がおくれている。研究がおくれていることの一つの理由には、やはり役所の縦割りもあるのかなと思います。

 恐らく、本来きちっとやるとすれば、法務総合研究所などがかなり学問的に、諸外国の例を相当しっかりと集めて、そして分析をして、プログラムを組み立てるということが必要だろうと思うんですが、この辺の努力はどういったことをされているのか、あるいはこれからどういう意欲でおられるのか、お話しください。

○杉浦国務大臣

 性犯罪者処遇プログラムにつきましても、矯正と保護の連携を図ってやっております。

 日本の官庁は縦割り、局あって省なし、課あって局なしという格言があるぐらい、局が違うと会社が違うようなものだというふうな表現もされるわけですが、しかし、物事はまざり合うものが多うございます。

 そういうこともございまして、私、大臣就任と同時にPTを立ち上げまして、再犯防止については、三ッ林政務官を座長として、再犯防止プログラム、それから性犯罪、これなんかはそのチームで今後検討してもらおうと思いますし、先生の御指摘の二チームも、それも三ッ林チームで今後引き続き検討していってもらうつもりでおりますが、局をまたいだ問題をそれぞれの局から関係者が寄ってもらって精力的に議論を始めておるところでございます。

○枝野委員

 せっかく政務官、御担当ということで、通告しておりませんが、意欲だけお聞かせをいただければと思いますが、政務官はたしかお医者様でいらっしゃいまして、まさに科学者でいらっしゃいます。私は、矯正保護、科学的な分析といいますか整理、あるいは、医学の研究をされる場合と同じように、諸外国の例をきちっと集めてきて分析をして、そういう手法なしに進めてはもう時代おくれなんだろうと。経験と勘に頼るというのはいい部分もありますけれども、システマチックに、科学的分析ということが非常に重要だろうと思いますので、科学者でもある政務官が御担当されるのはかなっていると思っております。ぜひ頑張っていただきたいというふうに思いますので、一言だけ意欲をお示しください。

○三ッ林大臣政務官

 枝野先生から大変な激励の言葉をいただきましたけれども、やはり今回の性犯罪者処遇プログラム等も、行動認知療法とそれなりの科学的な根拠というのをもとにした作業療法の一つと言えると思いまして、大変私も期待しているところであります。これからそのような科学的な根拠をもとにしてしっかりと再犯防止というものに取り組んでいかなければならないと思っておりまして、大臣指導のもと、私も精いっぱい頑張ってまいる所存でありますので、今後とも御指導よろしくお願いいたします。

○枝野委員

 本当に責任重大な仕事だというふうに思いますので、しっかりお願いをしたいと思います。

 プログラム処遇について、もう一点だけ簡単にお答えをいただきたいと思うんですが、やはりこういう問題について、日本はいろんな意味での研究、分析が、私は残念ながらおくれていると思います。おくれているのは、例えば、大学などに刑事政策という単位がそもそもなかったり、あるいは、あっても一単位、つまり一講座しかなかったりして、刑事政策といった場合にはもう本当に幅広ですから、したがって、深い研究がなされている研究施設自体がそもそもない。せいぜい法務総合研究所がどれぐらいやっているかということではないのか。

 こうした実態を何とか変えていかないと、もちろん法務総研が中心になっていろんな研究をするのは大事だと思いますし、メーンだと思いますけれども、いろんな大学、研究施設で、どうやったら矯正できるのかということについてさまざまな研究がなされている、そうしたすそ野があって初めて最先端のものが実証されていくということだと思うんですが、こうした大学の研究などの体制、実態についての思いと、私は、現状ですらそうであるのに、ますますそれを悪くしたと思っています。

 それは、私の時代には、司法試験の選択科目で刑事政策というのがありました。ちなみに、私は一番教科書が薄いということで国際私法を選択しましたが。選択はしていないんですが、一応司法試験の選択科目の中にあれば、それを選択したいという人もいるので、大学その他も一定程度やらなきゃならないし、司法試験を受けようという人や司法試験崩れの人が、崩れと言っちゃいけないかな、司法試験か、大学の先生になろう、研究者になろうか迷った人が、刑事政策おもしろいということで研究者になったとか、いろんなケースがあり得ると思うんですが、どうしても、法学部の学生にとって、司法試験の科目から外してしまったということがあると、マイナー科目になっていくという傾向が私はこの間あったのではないのかなということで、本来もっともっと充実させなきゃならないところが逆行したのではないのかなという問題意識を持っています。

 ロースクールになったことで、今度はロースクールの中で刑事政策をしっかりやってもらえばいいという部分もあると思うんですが、そこもしっかり促していかないといけないと思うんですが、こういった大学等の背景の問題について、簡単にお答えください。

○杉浦国務大臣

 先生の御指摘は、わからないわけでもございません。選択科目の中に刑事系が少ないという印象を私も持っております。

 ただ、新司法試験の選択科目につきましては、司法試験委員会の意見を聞いて、法務省令において定めるとされております。司法試験委員会におきまして、実務的な重要性とか社会のニーズ、法科大学院におけるカリキュラム、教科内容、科目開設状況等を総合考慮の上、一昨年の八月二日、法務大臣に対して司法試験委員会から八科目を選択、刑事政策が入っていない八科目ですね、挙げましょうか、知的財産法、労働法、租税法、倒産法、経済法、国際関係法公法系と国際関係法私法系、環境法の八科目を選択科目とするのが相当との答申が参りました。当省では、これら八科目を選択科目とする法務省令を定めたところでございます。

 伺ってみますと、司法試験の試験委員会では、選択科目の選定のために、平成十六年当時開設されていた法科大学院全六十八校に科目開設状況を照会しましたところ、選択科目とされた八科目については、六十八のうち、五十八校以上が科目を開設していたのに対し、刑事政策関連の科目は四十校が開設するにとどまっていたことなどから、刑事政策が選択科目として答申されなかったというふうに考えております。

 しかし、その同じ司法試験委員会の答申では、新司法試験を三回程度実施した後、選択科目の見直しをすることが相当であるという答申も参っておりますので、見直しを行う際には、司法試験委員会において、刑事政策に精通した法律実務家の需要の高さをも含めてさまざまな要素を考慮して御検討いただくことになろうか、こういうふうに考えております。

○枝野委員

 私は、党の方針に反して、一貫してロースクールには反対をしてきている立場なので、ほら見たことかという話なんですが、結局、ロースクールはお金もうけのお手伝いをする弁護士をつくる機関ですよねというのが今のところにもあらわれていますよね。

 刑事政策が、いっときの司法試験のように、選択科目は負担が多いからつくらない、入れないというんだったらわかりますけれども、今のような科目が並ぶ中に刑事政策が入らないというのは、まさにお金持ちの、あるいはお金もうけのお手伝いをする弁護士をつくりたいという方向性が私は否定できないと思う。

 きちっと、むしろロースクールにおいて、もちろん、今の高度な経済社会の中には、今指摘された、今回決められている選択科目というのは重要だと思います。その一方で、弁護士、あるいは法曹三者の重要な役割の少なくとも半分は刑事司法であるということをしっかりと踏まえたロースクールでの教育とか新制度における試験のあり方というものがなければいけないということで、そもそもロースクールに刑事政策がないところがあるということ自体が、私からすれば理解不能であると思っております。

 時間が残り少なくなったので、あと二問だけ、どうしても聞きたいことがあります。

 協力雇用主制度というのがある。刑務所を出てこられた方などを雇い入れてくれる、協力をしてくれる。まさに、先ほど来お話があるとおり、出てきても、仕事、定職につければ再犯に走る可能性は低い、定職につけないとなかなかそうはいかない、やはりそれが現実だと思いますので、この協力雇用主制度、雇っていただける協力者は大変重要だと思います。

 どういった事業者がこうした雇用主になっていただいているのかという現状をまずお話しください。

○杉浦国務大臣

 協力事業主という方は、犯罪の前科があることを承知の上で出所者などを雇っていただいている事業主のことをいいまして、昨年の四月一日現在で、若干ふえております、前年比二百人ほどふえておりますが、五千七百社人ほどの協力雇用主が全国におられます。

 正直言って、中小企業主の方が多い。中には大きな企業の方もおられますが、中小企業の方が多いわけでございます。

○枝野委員

 ちなみに、上場企業なんてありますか。

○杉浦国務大臣

 私の知っている限りは、ございません。

 それもあるものですから、実は、ことしの一月に、日本商工会議所、東京商工会議所の役員総会、二百五十人ぐらいいらっしゃいましたが、全国の会頭を集められたところへ伺って、裁判員制度、司法支援センターへの支援等と同時に協力していただきたい、協力雇用主として再犯防止のためにぜひともお力をおかしいただきたいということを話させていただきました。

 今週の木曜日は経団連の役員総会に参りますので、これも二百人ぐらいお集まりいただきますので、三点セットお願いしますが、協力雇用主になっていただくよう、力説したいと思っております。

○枝野委員

 まさにそこはしっかり力説していただきたいんですね。

 もちろん、職種によって、なかなかそういった方は雇いにくいという職種もあるでしょうし、あるいは、多くの人が入りたくても入れないという企業ですから、そういうところに刑務所を出てきているから逆に入りやすいというのも、これはおかしな話になりますから、必ずしも正規雇用である必要はなかったりするんじゃないかと思いますが、特に、今のような団体の幹部をされているような大企業の方は、何かというと、企業は社会的責任を果たしていると偉そうにおっしゃるんですね。

 だったら、一番、社会的責任を果たすという意味では、刑務所を出てきて、少なくとも更生しようという意欲があるのに仕事がないという人たちを雇って再生させるというのは何よりの社会的貢献だと思うので、そうしたこともやっていないで、我が企業は社会的貢献していますだなんて無責任なことを彼らに言わせないように、ぜひ、大臣、強く申し入れていただきたいというふうに思います。

 最後に、今の保護司さんにしてもそれから協力雇用主にしても、あるいは、きょうは具体的に聞けませんでしたが、更生保護施設などにしても、本当に大変な仕事をしていただいているわけですね。犯罪を犯したことのある方を、前科のある方を立ち直らせるという役割で、率直に申し上げて、普通の人なら、犯罪を犯した人と接触するのは避けたいとどうしても人間思いがちになる中で、あえて、しかし、そうした人たちを立ち直らせることが大切だという熱い思いでこうした仕事をしていただいているわけであります。

 保護司さんの数が足りないということ、あるいは協力雇用主になっていただける方もまだまだ足りないということの背景には、そうした努力をされている方の存在自体が必ずしも社会で十分知られていないということが背景にあるのではないかと思うんですね。

 こうした人たち、まさに保護司さんもあるいは協力雇用主の方も、別にお金のためにやっているわけではない、むしろ、経済的には自腹を切るぐらいの中でも頑張っていただいているということですから。だとすれば、何なのか。それは、まさにこうやって世の中を下支えしていただいている、地道なところで支えていただいているという方がいることを、少なくとも我々の立場は、世の中に広く知らしめるということが、我々の政治の役割ではないかと私は思います。

 そうした努力が、残念ながら、今、大臣が、先ほど、商工会議所等で話していただいて、また今度も経団連で話していただけるということで、大変いいことだと思いますが、オピニオンリーダーだけではなくて、世の中に広く周知をさせる必要があるんだろうと私は思います。

 何だか、今、一生懸命、裁判員制度の広告を新聞などに打っているようで、これは裁判所が打っているのか法務省が打っているのか正確に見ておりませんが、新聞の内側の面の広告のページまで読むような人は、きっと裁判員制度がスタートするということは実はよく知っていたりするんだと思うんですね。新聞をお読みにならない、あるいは新聞を読んでもスポーツ欄とせいぜい社会面ぐらいしかお読みにならないという方が、裁判員制度が始まるということを御存じなくて、スタートしたときに、大慌てで、何だこれはと騒ぎになるんじゃないか。

 そういう意味では、どこに、広告媒体にどういう金を使うかということでいえば、私は、むしろ、新聞広告を打つんだったらば、まさに新聞を読んでいらっしゃる、しかも、皆さんが裁判員制度の広告を打っているような内側のところまで読んでいらっしゃる皆さんに、保護司さんとか協力雇用主とか、それから更生保護施設とか、こういう方がこんなことのためにこんなに地道に頑張っているんですよという周知をした方が、広告効果としてずっと大きいと私は思いますので、裁判員制度に使っているような宣伝広告費の何%かでもそちらに回していただければと思うんですが、いかがでしょうか。

○杉浦国務大臣

 貴重な御指摘をいただきまして、ありがとうございました。ぜひ努力していきたいと思います。

 刑務所出身者、少年院帰りだということで、世間の風は正直言って厳しいですね、なかなか雇ってもらえない。そういう中で、ともかく、私、全国八ブロック全部回りましたが、保護司さんにも会い、更生保護法人も訪ね、いろいろな方と話してきましたけれども、皆さんそういう中で本当にまじめに、真剣に取り組んでくださっております。

 そういう姿を国民の皆さんにうまく伝えまして、工夫いたしますが、受刑者、刑期満了者、少年院退院者が温かく社会で受け入れられるような素地をつくっていくような意味も込めたいい広告を、研究、検討してまいりたいと思います。御指摘、どうもありがとうございました。

○枝野委員

 時間ですので終わりますが、まさに、今回、委員会として起草した案はスタートラインだというふうに思いますので、特に現場が重要な話、それから予算、人員の確保というのが大事な話ですので、法務大臣のさらなる努力を期待しまして、質問を終わります。ありがとうございました。

<他の議員の発言部分省略>