[欧州調査団の報告]
○枝野委員
民主党の枝野でございます。
今回、大変貴重な経験をさせていただきましたこと、関係者の皆さんにまずは冒頭御礼を申し上げます。
まず、私は、EUにつきまして、感想として受けとめましたこととして、二重の意味で肩に力が入っていないと、いい意味で受けとめて帰ってまいりました。
先ほど来お話がありますとおり、主権の一部移譲という大変画期的なプロセスを歩んでいる途中であるという意味で、肩に力が入ってもおかしくない状況だと思いますし、また一方で、各国での批准の手続の困難性がある、これを乗り越えなければならないという意味でも、肩に力が入ってもおかしくない状況だと思いますけれども、私が受けとめた範囲では、どちらの意味でも、いい意味で肩に力を入れることなく、ある意味では大きな歴史の流れに対する確信を持ってこのプロセスに臨んでいるという印象を受けてまいりました。
そして、EU統合に向けて、やはりその背景として二つの点がヒアリングの中で印象に残っております。
一つは、テロ等の問題に関して、もはや一国単位では対応することが困難になっている、そのことがEUの統合を前進させる一つのエネルギーになっている、こういう認識が示されたことであります。
それからもう一点は、これはあえて固有名詞を挙げない方がいいと思いますけれども、EU議会の関係者の方からは、また複数から、今回のEU統合に向けた動きというものは、アメリカ帝国主義という言葉も使っておりました、あるいはアメリカ一国主義という言葉も使っておりました、こうしたものに対するフラストレーション、あるいはこうしたものに対する対抗であるということを堂々とはっきりとおっしゃった方が複数いらっしゃいますし、全体として、やはりアメリカにどうヨーロッパが対抗していくのかという視点というものは強く受けとめることができました。
翻って私どもの国を考えたときに、一点目のテロ等との対抗という意味では、幸いにして我が国は島国でありますけれども、交通機関等の発達によって、そのことによって、単独でテロと闘い得るか、テロが国内に入ってくることを防ぎ得るかといえば、それはかなり困難な状況に入っているという意味で、EUと同じような立場に立った物の見方をしなければならないだろう。
もう一点は、短期的に見れば東アジアでは残念ながらまだ冷戦の名残が残っておりますが、憲法という国家の大きなビジョンを考える、つまり、三年、五年の話ではなくて、五十年、百年と変わらない憲法をというのは難しいし適切ではないかもしれませんが、せめて十年、二十年をにらんだ視野で物事を構築していかなければならないとすれば、ちょうど、ヨーロッパがロシアとアメリカという二つの大国に挟まれた中で、面積や人口で劣る国が共同歩調をとることで対抗していこうというプロセスをとっているのと同様に、日本の置かれている地理的な状況も、海を挟んでアメリカ合衆国、そして近いところには二十一世紀の超大国になるであろうと予想される中国という二つの大国に挟まれて、残念ながら、面積や人口という意味ではこの二つの国とは到底比較にならない状況にある、同じような状況にあると言わざるを得ないと思っています。
そうした中では、ヨーロッパの歩みを、アジアにはアジアのやり方がある、同じことをやる必要はないと思いますけれども、この両超大国に挟まれた日本の立場として、韓国であるとかモンゴルであるとか台湾であるとか、あるいはASEAN諸国との連携というものをさらに重視し、また、そこを見据えたこの国の将来ビジョンというものを考えていかなければならないのではないかということを、改めて強く認識させられてまいりました。
最後に、憲法委員会の話とオンブズマンの話について簡単に触れさせていただきたいと思います。
一つには、スウェーデンだったと思いますが、オンブズマンの選任は国会全会一致で選んでいる、だから非常に権威があるし、事実上の政治的な力も影響力も大きいというお話がございました。
また、フィンランドの憲法委員会、ここは法律等の合憲性の審査を議会の委員会できちっと行う、そして、そこでの審査は、いわゆる多数決原理以上に論理性を重視して、国会で法律の憲法適合性をきちっと行うというお話がございました。
特に、小選挙区制度を採用して二大政党化をしている日本の政治状況は、一般的には、与野党の妥協の余地のない、真正面から衝突するということが前提となっている政治システムだと思いますけれども、行政との関係で議会の権威を背景に権限を行使すべきオンブズマンと、憲法について、従来の行政的、法制局的な立場でなくそれに対してコミットする憲法委員会というものを多数決原理そして二大政党の対決とは違う視点から組み立てていくことが、我が国の法の支配を確立していく上で必要ではないかというふうに感じてまいりました。
以上でございます。ありがとうございました。
<省略>
○枝野委員
二度目になって恐縮でございますが、保岡先生から憲法委員会の御発言がございましたので、念のために発言をさせていただきたいというふうに思います。
EUの、特にフィンランドあるいはEU議会の憲法委員会についてお話を伺ってまいりまして、大変いい制度であると私は個人的には受けとめてまいりました。
何がいい制度であるかというと、行政に憲法解釈の権限、事実上の権限を持たせずに、議会がしっかりと憲法についての一次的な判断をしている。いずれも最終的には裁判所が憲法判断の最終決定機関であるのは、どういった制度であれ、立憲主義のもとでは変わりありませんけれども、裁判所が判断をするのは事後的でありますので、法律制定に当たって、あるいは行政行為がなされるに当たって憲法の適合性をどこがチェックをするのか。
残念ながら、日本は、行政の内部である内閣法制局が事実上、憲法判断の場になってしまっておりまして、内閣法制局判断が、一行政機関の判断でありながら、にすぎないにもかかわらず、金科玉条のように使われてしまっているというゆがんだ状況にあります。それに比べて、民主的なコントロールを受けている議会の中に憲法の一次的な判断の部局を置くということの意味で、フィンランド、あるいはEUの憲法委員会もそうした側面を持っているかというふうに、ここは追加、補充調査を現地の高官の方にお願いをしてきておりますが、少なくともフィンランドではそうした機能を果たしている。こうした役割というのは、我が国の、特に戦後五十年間の憲法議論、憲法解釈のゆがみであるとか行き詰まりというものを考える上で大変重要であるというふうに感じてまいりました。
したがいまして、憲法の常設委員会を置くのであるならば、何よりもまず、内閣法制局から議会が憲法判断の一次チェック機能を奪うということが主たる目的にならなければいけないということを強調しておきたいというふうに思います。
それから、せっかく発言の機会をいただきましたので、重ねて、先ほど田中議員の方から、会長からもお話がありましたけれども、国民投票について私の受けた印象を申し上げますと、EU憲法に対する国民投票をするかしないかということの各国の判断は、各国の法制とのかかわりと、それからもう一つは、EU憲法の意味づけを国内政治的にどういうふうに置くことがいいのかということで国によって分かれているのかなという印象を受けました。フィンランドとスウェーデンはいずれも国民投票をしませんが、会長の最初の御報告にもあったとおり、それぞれ、位置づけ、国内的な受けとめ方が違っているようでありまして、そうしたことが各国間にあって、それが国民投票をする、しないという判断につながっているのかなというふうに私は理解をしてまいりました。
ちょっと別の視点から、国民投票について気になりましたのは、EU憲法の国民投票が行われる国々で、いずれも、他の内政問題、特に現状の政府に対する批判でEU憲法に対して否定的な票がふえるのではないか、そういう心配を複数の方がしておられました。つまり、提案をするのは事実上、政府になりますから、その政府が信任を受けていない政府であると、EU憲法自体はいいものであると思っていても否定的な票がたくさん出て否決されるリスクがあるという危惧を複数の方がおっしゃっておりまして、これは、将来的に我が国でさまざまな、憲法を含めて国民投票制度を入れるに当たって、国民投票をするときに、その個別のテーマについての国民の意思を問うということと、政府に、政権に対する信任を問うということとが混在化しないように、ごちゃごちゃにならないような仕組みをつくりませんと、いろいろややこしいことが起こるのかなという、直観的な印象ですけれども、受けて帰ってまいりました。
以上でございます。