[日本国憲法に関する件(二十一世紀の日本のあるべき姿)について]
○枝野委員
民主党の枝野でございます。本日はどうもありがとうございます。
今の地域主義的な問題のところから少しお尋ねをさせていただきたいと思いますが、ヨーロッパではEUというハードなリージョンが早い段階から形成をされてきている。今先生おっしゃられたとおり、東アジアでこれからそういったものがソフトな形でもできていくかどうかということを考えるときに、ヨーロッパには、よく言われるのは、キリスト教文明という一つの共通の基盤があるとか、あるいはローマ文明という共通の源を持っているというようなことが語られて、そこが東アジアと決定的に違うんだというような言われ方をします。
あえて西洋の思想史ではなくて現状の政治を分析されている立場から、こうしたキリスト教やローマ文明の影響というものがEUの形成などについてどの程度の影響を持っているというふうに受けとめていらっしゃるのか、教えていただければと思います。
〔会長退席、鹿野会長代理着席〕
○高橋参考人
少なくともEUの歴史を見ている限り、ローマ等は余り大きな影響力は持っていなかったのではないかなというふうに思っております。それよりも、やはりEUというのは政治的、人為的につくっていくのであるという意識が非常に強くありましたので、従来、歴史的に存在したヨーロッパあるいは文化的に存在したヨーロッパよりは、これから違った意味での新しい政治空間としてのヨーロッパあるいは経済空間としてのヨーロッパをつくっていくという意識が非常に強くあったということがありますので、確かに歴史的なものがあったということは否定できないことは間違いないのですが、その意味で、余りローマ等は影響は与えていなかったというような気がします。
その一つの証左になりますのが、早い段階からヨーロッパということをEUは言っているわけですね。ところが、歴史上のヨーロッパといいますと、どうしてもロシア史も含んでいるのがヨーロッパですので、現状として入っていない段階でヨーロッパという言葉を使うのは僣越なのではないかといろいろ批判ができたのですが、そこに込められた意味は、新しいヨーロッパみたいなものをつくっていくのであるという意味を込めてヨーロッパという言葉をあの段階であえてつくり、あえて西ヨーロッパとは言わなかったということにもあらわれているのではないかなと思っています。
○枝野委員
もう一つ、ヨーロッパでのリージョンの形成と東アジアの今後を考えたときに客観条件で大きく違うなと思いますのは、ヨーロッパの場合も、ドイツ、フランスが相対的には大国であるということは言えるのかもしれませんが、そうはいっても、同じような大きさの国が幾つかあるという状況だと思います。
東アジアを見たときには、現状を考えると、中国が圧倒的に大きな面積、人口を抱えている、あるいは資源も含めて抱えているという、地理的というか条件を抱えております。EUがある程度リージョンとしての形をつくってこられたのは、その格差があるとはいっても、アジアにおける中国と他の国との差ほどは大きくない、あるいはフランス、ドイツという、あるいはイギリスも含めてもいいと思いますが、ほぼ同じぐらいの力を持った国が相互にいい意味でも牽制をし合えるような大きさであった、規模であったということがあるのではないかなと思うのですが、アジアにおけるリージョンを今後形成していく場合における中国の大きさを、ヨーロッパのリージョン形成のプロセスから見て、どう御判断されるでしょうか。
○高橋参考人
確かに先生おっしゃるとおりで、ヨーロッパの方がサイズからいえば似通った国があり、それである程度の均一性を持っていますので、そのようなリージョンづくりというのはより容易であったという点は間違いないと思います。
ですが、東アジアの方へ行きますと、中国というものがやはりより大きな形で考えられ過ぎているんじゃないのか、それは一体なぜなんだろうというのが一つずっとありまして、それは昔からの、中国は独自の朝貢システムをつくっておりましたので、昔の東アジア国際体系みたいなものをつくっておりましたので、そこが根っことして一つあるのではないかということがあります。
それからもう一つは、将来的に恐らく、中国が今のような経済成長率を誇り、今のような人口数等々でいけば、確かに非常に大きな国になるということも間違いないのですが、これは私だけではなくて、元のゲンシャー外相等々も言っていたのですが、逆に、そういうサイズになればなるほど非常に難しい点が出てくる、大きいがゆえの悩みといいますか、大きいがゆえの弱さというものも出てくる。ですので、その点もやはり見てみる必要性があるのではないかなということが一つあるかと思います。
それからもう一つは、先ほどの東アジアの昔の関係に帰するのですが、ヨーロッパと、EUの場合と違いますのは、先ほども簡単に触れさせていただいたのですが、横の関係なんですね。ところが、何となく東アジアの中でまだ縦の関係として国際関係を考えていくという面がある程度見られていますので、そこをどう変えていくのかということがあると思います。
それから最後の第四点になりますが、恐らくそうであるがゆえに、私は、最初の段階から中国にリージョンづくりの中に加わってもらった方がよりよいのではないのかというような印象を持っておりまして、確かに難しい点があるということは間違いありませんが、ただ、ASEANプラス3等にも入っておりますし、APECにも入っておりますし、そのような点からして、それなりの加わってもらうことに対する合理性みたいなものはある程度あるのではないかなというふうに考えています。
○枝野委員
先ほどマルチレベルガバナンスの話のところで、イギリスが、ウェールズですか、スコットランドですか、EUと直接の結びつきが強くなっているというようなお話があったかと思うのですが、要するに、主権国家というものを考えたときに、イギリスの一地方であるところと国家を超えたガバナンス機能を持つEUとが直接結びつくという状況が進んでいきつつあるという中で、例えば、特にその地域に住んでいる人たちの意識として、ロンドンにある主権国家というものをどういうふうに見ているんだろうか。非常に複雑な感じなのかなという気がするんですけれども、この辺について、もし何かわかることがあれば教えてください。
○高橋参考人
イギリスというより、この場合UKと言った方がいいのですが、UKの場合には、御存じのとおり、サッカー等々でもそれこそスコットランド、ウェールズ、イングランド等々で出てきますので、その問題につきましてはちょっと、どれほど強いUK意識があるのかという点をもし質問されますと、これは非常に難しい問題があるというふうにまずは指摘させていただきます。
それよりもむしろドイツのケースを言わせていただきますと、ドイツの場合は明らかに考え方が三層構造になっています。一つは、自分たちの州のアイデンティティーといいますか、そういうものをある程度重視するというのが一つあります。そして、それと同時に、ドイツならドイツということを重視する、それのアイデンティティーがあります。
それからもう一つは、必ずしもブリュッセルではないんですが、ヨーロッパをヨーロッパとして重視する。ですので、アイデンティティーが必ずしも一つに向かないで、三つのものを共存させながら抱いていくという現象がドイツの方が非常に強く、また前から見られたような現象であり、恐らくUKのスコットランドの場合にも同じような方向に行くのではないかなというふうに考えております。
○枝野委員
今のドイツの場合のアイデンティティーの対象としての欧州というのは、先ほど話に出たリージョンとしての欧州でよろしいんでしょうか。それとも歴史的な、それはやはりそこではまざっているんですか。
○高橋参考人
正直言いまして二様あると思います。一つは、現状の、EUをヨーロッパとして抱くヨーロッパに対するアイデンティティーがあるんですが、もう一つ、ドイツの場合は、ロシアまで含めてヨーロッパとしてとらえ、これを全体ヨーロッパという言い方をしているんですが、その全体ヨーロッパに対してヨーロッパのアイデンティティーを抱くという形で、その点に関してはちょっと人によって違うというところがあるのではないかなというふうに私は思います。
ですので、その意味で、ではドイツで考えるヨーロッパは本当に均一かといいますと、まさに今説明させていただきましたように、ある程度ばらばらというところがあるのかな、そのような印象を持っております。
○枝野委員
ドイツの州に対する意識というもので、物を知らないので大変恐縮なんですが、ドイツの州というのは歴史的に見たときにどれぐらいの古さを持っているんでしょうか、アイデンティティーの対象になるような単位として。余り長い歴史とも思えないような気がしますし、そういったところが連邦の中でアイデンティティーの対象になるような存在になっているというところについて、もしわかれば教えていただきたいと思うんです。
○高橋参考人
ドイツの州、ラントという言い方をしているんですが、基本的には神聖ローマ帝国ぐらいのときに基本的な原型がつくられていって、それが徐々に発展していったということがあるのではないかなと思っています。
その前提につきましては、なぜあそこまで固まっていったのかということについては幾つかあるんですが、一つは、やはりそのラントの境界を越えてどこかへ行く、あるいは移住するという流れがそう強くなかったということが一つありますし、それからもう一つは、文化的な意味で、ドイツという文化は一つかといいますとこれまたいろいろありますので、例えばミュンヘンを中心とするような、バイエルンであればバイエルン文化みたいなことが言われ、そのようなことがありますので、そのような形で独自の文化性みたいなものを各ラントがずっと強めていった、そのようなことがあって最近までずっと残ってきているというところがあるのではないかなと思っています。
ただ、人造的な州というのも戦後できました。ですから、ちょっと細かい話になって恐縮なんですが、一番大きなのがデュッセルドルフがあるノルトラインウェストファーレンという州なんですが、ここもラインラントとウェストファーレンの合併州。ですので、今でも、実は二つの、カルチャーは違うのですが、ラインラントとウェストファーレン。あと南の方も、バーデンビュルテンベルクなんですが、これもまた全然違っているという形で、その意味で、現状の行政州と、どちらかというと昔から根っこを持っている文化的な州というものは違うのかなという感じを持っています。
○枝野委員
分権に非常に関心を持っているので、そういった視点からもう一つ、EUと地方との関係で、イタリアなどの場合はどうなんでしょう。
つまり、ここはよく、我々の知る範囲では、北と南で格差があって、イタリアの国内でその地域間格差の問題の議論がある。それから、かつてのローマ帝国の時代を別とすると、イタリアがあの単位で国家として機能したのは歴史的に非常に短い。それまでは都市国家的な意味で地方が分立をしていたという中で、そういう非常に薄っぺらい歴史的な知識から見ると、ここは地域ごとに、イタリアという主権国家の概念の意識が小さくなっていって、地域とEUとの結びつきが強くなりそうなイメージがあるのですけれども、実態はどうなのでしょうか。
○高橋参考人
実は、歴史的にEUには日本的にいいますと国土軸みたいなものがありまして、これを僕らはマンチェスター―ポーラインという言い方をしているのですが、イギリスのマンチェスターから始まって、ライン川沿いにずっとおりてきて、スイスを経由して北イタリアへ行く地域、ここはヨーロッパで一番栄えてきた地域であり、かつまた都市国家の地域なんですね。ですので、ここの伝統を持っている限りは、今先生おっしゃったように、非常に分権性が高く、そのようなところの伝統が今でも非常に強く残っている。それはそのような歴史性が一つあるということに由来するのではないかなというふうに考えます。したがって、その意味で、ポー川より南のイタリアといいますのはどちらかというと従来型の国家構造みたいなものをとってきましたので、そことのクッションのやり方みたいなものが非常に難しく、今でもまた出てきているというような印象を持っています。
○枝野委員
今度はEU全体の話なんですが、歴史的に見て、経済問題などからリージョンの形成をしていったということも、理由も含めて非常に理解できるんですが、きょうのお話の中で、安全保障とか、そういった話があえて余りお触れにならなかったのか、グローバリゼーションの中で、リージョンとしての形成が順調にと言っていいんでしょうか、特に進んでいるEUの中で、そういうことがそれぞれの主権国家ごとの安全保障に対してどういう影響を与えているのか、そして与えていくのかということについて教えていただければと思います。
○高橋参考人
私自身は、確かにEUというのは、最初は石炭、鉄鋼ですから、経済面から始まっていったんですが、実は、動かしたものは明らかに政治的な意思でなかったのかと思っています。ですので、つぶれてしまったんですが、それと並行裏にヨーロッパ防衛共同体構想というのがありまして、そこで安全保障面をどうするかということがずっと話し合われてき、それが、フランス下院が批准に失敗してついえてしまったんですが、そこではやはりヨーロッパ各国軍の合同体のヨーロッパ共通軍をつくると。流れがずっとそのときから存在したと思っています。
ですが、それがつぶれたためにNATOということが起こり、NATOの場合にもドイツ軍はちょっと違った位置づけが行われていたんですが、それがずっと続いて、冷戦が終わった段階で再び、先ほど言ったようなヨーロッパ共通軍といいますか、そのようなものをつくり出していこうというのが、今一部、徐々に徐々に始まっていったのかなと印象を持っています。
それに、EU国内で少なくとも従来型の戦争というものが起きるということはほとんど考えられなくなってきましたので、そこでのミッションはコソボですとかそのような問題の方にずっと限られていくのではないのか。そのときには、やはりヨーロッパがそういう形で共通軍構想というものを持ってもよいのではないのかなと考え始めたのかなという気になっています。
○枝野委員
そうしますと、今まではなかなか難しかった、結果的にうまくいかなかったけれども、今後は共同軍的なものまで含めた形になっていくことは、もちろんいろいろな、所与の条件が変わってくる可能性もありますけれども、期待をできるという理解でよろしいんでしょうか。
○高橋参考人
これが前から、マーストリヒトの段階から言い始めてきました共通の外交・安全保障政策というものをEUで打ち出していまして、それと先ほどの問題とどうリンクするかはまだちょっと難しいところがあるんですが、そのところも踏まえて、だんだん共通軍的なものを強めていくのではないのか。ただ、各国軍はそれとは別に残ると思います。ですから、二段構え的なものであって、共通軍がどちらかというとタスクフォース的な軍になって、それと同時に、ちょっと違った構成をとるのかな、そういう印象を持っています。
○枝野委員
どうもありがとうございました。
<他の議員の発言部分省略>