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 議事録


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衆議院-憲法調査会


平成12年11月30日

[日本国憲法に関する件(二十一世紀の日本のあるべき姿)について]

○枝野委員

 民主党の枝野でございます。本日は、どうもありがとうございました。

 お話は、なるほどと共感をさせていただいた部分、まあ情報公開のお話などはある意味では一緒に仕事をさせていただいたような部分もございますので、改めて意を強くした部分、あるいは逆にちょっと疑問を持たせていただいた部分、多々ありますけれども、まず最初に、チベットの問題にお触れをいただきました。

 実は、私も、あるいはそこにいる牧野議員はチベット議連の会長をやっていまして、こちらの五十嵐さんというのは事務局長をやっておりまして、私は前の会長をやっていまして、チベット問題をこういった場で提起をしていただいたのは大変ありがたく思っております。ただ、かなり御遠慮ぎみに御発言をされたのではないかなと思います。

 今、世界的な、普遍的な価値として認められているだろうということで御指摘をいただいたデモクラシーとか、あるいは人道主義、個人の尊厳というような価値観からすれば、チベットに対して行っている北京政府の対応というのは、明らかに許されるものではない。近隣諸国、チベットの隣人の一人として、我々は本来経済制裁などにまで踏み込むべき対応を求められるのではないだろうか。まあ国益という観点からすればそこまでできないにしても、少なくともODAの支援を行うなどというのは、チベット問題の一点を取り上げても日本国の外交姿勢として許されないのではないかというふうに思うんですが、その点さらに御意見をいただければと思います。

    〔鹿野会長代理退席、会長着席〕

○櫻井参考人

 チベットの一九四九年以来の歴史を見ますと、やはりこれはすさまじいなあ、こんなことがお隣の国で起きているのを私たちはいかにして平静に見続けることができるんだろうかというふうに私は感じます。それから、チベットという国のことを忘れることが日本にとってどれだけマイナスになるかということも非常に痛感をしております。

 チベットに対して、ただ単に民間の大学がダライ・ラマ法王をお招きするということにとどまらず、私は、ぜひ日本の国会でダライ・ラマ法王をお招きして講演を聞いてほしいというふうに実は思います。ほかの国の元首で、それがクリントンさんであれサッチャーさんであれ、ダライ・ラマ法王が自分の国を訪れたときには、率先して法王にお願いをして、法王の宿舎に伺ってお話を伺うということをしているわけでございますけれども、日本国はビザの発給にも規制をかけるくらいですから、そのようなことは望むべくもないわけでございます。

 今、枝野さんがおっしゃいましたように、私は、日本が本当にアジアの国々から、日本という国はちゃんと考えているいい国だよね、アジアのために何かいいことをしてくれるかもしれないという信頼をかち取るためにも、やはり中国に対して正々堂々と正面から、チベット問題についてはいかなる弾圧も我々は許すことができない、チベットは二千年以上の歴史の中でずっと独立国であったのであるし、一九四九年に毛沢東さんたちのつくった中華人民共和国が一番先に攻め入ったとき、それがある意味で初めての外国の軍隊による占領でございますから、あのチベットを中国の領土の一部とすることは許されないということをきちんと述べて、そのような弾圧を続ける中国政府に対してはODAの削除も考えます、凍結も考えますということを言ってしかるべきだと思います。

○枝野委員

 ありがとうございます。

 もう一つ、アジア外交、特に中国との関係という点では、チベットのお話がありましたが、台湾のお話がなかったように思います。私は、台湾という国との関係におきましても、特にデモクラシーという観点から、少なくとも我々の信じる価値観からすれば、北京政府の行っている統治のシステムよりも、政権交代が選挙によって行われている台北政府のもとでの民主主義の方がより我々の価値観に近い政治形態がとられて、そこで多くの友人たちが存在をしているという事実があるというふうに思います。

 ダライ・ラマ法王につきましては、私もよく存じておりますが、ビザのところで非常に大変でしたけれども、まだ入国することができます。残念ながら、台湾につきましては、現職の総統を離れても、事実上日本は入国ビザを出さないというような対応をしている。こうした日本の台湾に対する外交姿勢についての御意見を伺えればと思います。

○櫻井参考人

 台湾に行ってみますと、この地球上のどこにこれほど親日的な、国と呼んでいいんでしょうか、国があるだろうかという大変に熱い思いに包まれるわけです。台湾の年輩の方だけではなくて、中年の方にも、日本に対して非常に友好的な思いを抱いている方が圧倒的に多うございます。

 台湾に行きますと、過去の歴史についても日本のことを非常によく理解してくださる方々が大変に多うございます。李登輝さんを初め台湾の首脳の方々は、ある意味では日本人よりも日本の文学を読み、日本人よりも日本の哲学を読み、日本の文化を愛している人たちです。

 台湾は、総人口の一二%が、外省人と言われる、もともと蒋介石総統らと一緒に中国大陸から来た人々、内省人と呼ばれる、もともとの台湾人は八五%を占めております。この八五%の人たちが、台湾は台湾である、中国の一部ではないと今言い始めているわけです。彼らは、みずからを新台湾人と呼びます。

 台湾の子供たちと話をする機会がございました。あなたの国はどこと聞きましたら、台湾だと言います。かつて子供たちは、台湾の歴史など学ばずに、中国の歴史だけを学ばされました。今、台湾では、新しい教科書ができて、きちんと台湾の歴史を教えているんです。その台湾が台湾人の望む形で存続を続けることが一番いいのだろうと思います。

 台湾の人々がぜひとも中華人民共和国と一緒になりたい、合体したいというのであれば、日本はそれができるような国際環境を整えることに力を尽くすべきだと思います。しかし、台湾人が、台湾人でありたい、台湾は独立したい、中国の一部ではないと望むのであるならば、それがそのとおりに実現するような国際環境を整えるのが日本の役割であろうかと思います。

 それは、台湾の将来がどのようになるかということは、アジアの民主主義の行方を占うものであるからです。台湾が台湾の人々の望む形で存続を続けることができるのであるならば、それはアジアに民主主義が機能するということでしょうし、そうでなくて、中国がたびたび言明しておりますように、武力によって台湾が中国の一部とされてしまうようでは、中国の持つ武力というものがアジアのデモクラシーをじゅうりんするということになっていくはずです。

 中国は、一九八九年のベルリンの壁の崩壊以来、アメリカやヨーロッパ諸国、それから旧ソビエトが軍縮を続けてきたのに比べて、大変な軍拡を続けてきました。毎年、年率二けた以上の伸びでございます。一番大きな伸びは、年率二八%という年もあったと思います。その中国の圧倒的な軍事力を、台湾を武力でコントロールするような方向に使われるとしたら、台湾の未来だけではなく、そのほかの国々の未来も危うくなると思います。日本国の未来も影を差されるだろうと私は思います。

 日本のためにも、アジア全体の民主主義のためにも、日本は、台湾人の望むような台湾であり続けることができるような外交的配慮、経済的配慮、政治的な知恵を働かせるべきだと私は考えております。

○枝野委員

 どうもありがとうございます。大変意を強くいたしました。

 ただ、ここまでは参考人とほぼ意見が一致するかなと思ったんですが、実はここからはちょっと物の見方が違っておりまして、そこについて意見交換させていただければと思うんです。

 今の御指摘のとおり、コソボなどの様子を見ても、デモクラシーとか人道とかという普遍的な価値観のために、国際的な軍事力を含めた協力というか支援をするという価値観を仮に認めたとして、それを我が国の立場に置きかえたときに、ほかにもあると言われればほかにもあるのかもしれませんが、最も近いところで最も大きな話というのは、今の二つ、チベット問題と台湾問題であろうというふうに私は思っています。

 私は、実は結論的には反対なんですが、集団的自衛権とか集団的安全保障とか、概念はいろいろと今混乱しているようですが、いずれにしても、もし、日本の領土、領海、領空、そして国民を守るという以外の方法で自衛隊を活用するということがあるんだとすれば、当然のことながら、その最も可能性が高いといいますか、最も日本が関与せざるを得ない、関与すべき対象は台湾問題とチベット問題ではないか。ところが、そのときに、この台湾問題とチベット問題に対して我が国のとっている外交姿勢は、明らかに我が国がやらなければならないことと逆のことをやっている。

 つまり、台湾についてもチベットについても北京政府のいわば言うなりであるという状況の中で、仮に、例えば憲法の話とか安全保障の話で、要するにデモクラシーや人道主義を守るために日本の自衛隊を海外でも活用しますというその部分だけがクリアされたとしても、現実には、最も近く、最も必要なその台湾、チベットの問題について、あいまいというよりも逆向きの姿勢であるというのでは、矛盾が生じてしまうのではないか。

 したがって、もしも普遍的な立場から軍事力を海外で行使するというところを百歩譲って認めるとしても、まず、その前段階として、北京に対する我が国の外交姿勢を改める、これは憲法をいじるとか法律をいじるとか以前の問題として、いつでもできる話なわけであります。これができていないのに、近隣諸国というか、民主主義や人道のために海外で軍事力を行使するというところの話には、したくてもできない、その前提を欠いているのではないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

○櫻井参考人

 確かに、枝野さんがおっしゃったように、論理的に突き詰めて言えば、その前提を欠いているのはそのとおりであろうかと思います。

 しかし、前提が全部整ってから次の段階の論議をするというのではないだろうと思うんです。すべてが整って、次の段階に進む用意が一〇〇%できたからそうしましょうというのではない。前提が一〇〇%になる前に、できるところから全部改めていくということが私は必要なんだろうと思うんです。

 日本の変化というのは、二十世紀を見ましても、余りにもスローで、余りにも少ないということがいつも言われてきました。これは安全保障に限らず、経済の分野でもそうです。日本が譲歩するときには、いつも遅過ぎて、いつも少な過ぎると言われました。それは、日本が余りにも変化することに憶病であって、それは自分自身の判断に対する信頼というものを持てないからだと思うんです。

 私は、日本人が、自分たちは、例えば集団自衛権ですか、安全保障に参加することを決めるけれども、それによってまた無謀な戦争に立ち入っていくというふうなことはないんだという、自分たちの心の中にしっかりとした歯どめがあるんだ、自分たちが論理的にきちんと考えていくことができるんだという自信さえ持てば、近隣諸国もそれを恐れることはないでしょうし、過ちを犯すことはもうないだろうという気がしているんです。だからこそ、すべての条件が整ったときに考えましょうというのではなくて、すべての条件を整えるべく全力を尽くしましょうという発想が必要なのではないかと思っております。

○枝野委員

 櫻井参考人のお話は、その限りでは非常によくわかる話でありますし、多分、櫻井参考人と私とで、ここから先、つまり北京に対する外交姿勢の話、そして、ではそのために国際貢献として何ができるのか、そこで私は軍事のところについては参考人と違って消極ではありますが、これは同じ土俵で議論ができるんだろうと思うんですが、残念ながら、近隣諸国に対する軍事的国際貢献、そのための憲法改正を唱えている同じ方が同時に北京に対する軟弱外交の旗を振っていたりする、そういう政治家が少なからずいるという現実も我が国の姿ではないだろうか。そういう人に対してはやはり不安を持たざるを得ないという視点もぜひ御考慮に入れて、今後もいろいろと活動していただければと思うんです。

 もう一点だけ最後に、ちょっと違う視点ですが、先ほど日米関係のところで、対等、緊密、これからの日米関係、「日米の成熟したパートナーシップに向けて」という話のところで出てまいりました。

 もちろん、緊密な国際関係を米国との間で今後ますますつくっていくことは大切だと思うんですが、この対等ということの意味がどういう意味であるのか。つまり、確かに英米関係はさまざまな歴史的なつながりがあります。文化的な共通性もあります。一種の対等性というのがリアリティーを持つのではないかと思います。日本も、十年前あるいは十五年前の日本であるならば、いわば経済的な力において対等性という部分がある程度あったのではないだろうかと思います。

 これからの日本を考えたときに、人口が減っていく、経済も伸び切った状態であるという中で、もちろん、対等だという気構えは外交上必要だと思いますけれども、現実的なパワーの問題として、米国と対等な国力を持った国としての日本というのはこれから想定をするべきなのか。むしろ、そういうパワーバランスにおいては日本の方が非常に弱いんだけれども、その中で毅然とした姿勢を持つ国として生きていくためにはどうしたらいいのか、こちらの方が大事なんじゃないかなと思うんですが、この点のところ、御意見を聞かせていただければと思います。

○櫻井参考人

 アメリカと対等と言うときに、私はアメリカと同じような軍事力を持つ日本をイメージしているわけではございませんで、私が申し上げたのは、日本はずっとアメリカから、まあ本音の部分では半分しか独立していない国とか保護国のような国というふうに見られてきたわけですが、そのような評価に甘んじる必要は日本は全くないということを申し上げたいんです。

 環境問題の話をいたしました。私は、日本は、環境技術についてはアメリカよりもはるかにすぐれたものを持っていると思いますし、環境意識についてもすぐれたものを持っていると思うんです。今私が申し上げたのは環境という一分野のことでございますけれども、そのほかにも幾つかあります。そのすぐれたものを二十一世紀のソフトパワーとして日本が発揮すれば、私は質的にアメリカには全然劣らない国ができると思っております。そういう意味で私は、アメリカと対等。

 また、安全保障の面でも、今の日米安全保障条約は、アメリカは日本を助けますけれども、日本はアメリカを助ける仕組みにはなっていないわけでございまして、これもやはりある意味では双務条約に切りかえていくべきだろうと思います。それは、戦いを好むということでは全くありませんで、独立した国として自分の国の安全保障は基本的に自分が担保するというところからスタートすべきだろうという考えからでございます。

 対等というのは、私は、日本にとって少しも難しいことではない、むしろ当然のことだと思っております。

○枝野委員

 今のような意味であれば、まあ双務条約にすべきかどうかの意見はちょっと違うんですが、ほかのところはほぼ意見が一緒でございます。

 どうもありがとうございました。また今後もいろいろな御意見をいろいろな場でお述べいただければと思います。

<他の議員の発言部分省略>